昨今のインターネット上では「Fランク大学は全て廃止すべき」という議論が活発化している。実業家の堀江貴文氏をはじめとする著名人の発言や、教育の質を問題視する声が高まる中、日本の高等教育制度の根本的な見直しが迫られている。本記事では、Fランク大学の定義から始まり、廃止論と存続論の両方の論拠を客観的に分析し、これからの日本社会にとって最適な教育制度のあり方を探る。
Fランク大学の定義と現状
Fランク大学とは何か
Fランク大学の定義は複数存在するが、最も厳密な定義では「河合塾が設定するボーダーフリー(BF)ランクに該当する大学」を指す。これは「偏差値35未満、もしくは受験者数が著しく少なく合格者平均点の測定が困難なため偏差値の測定が不可能な大学」のことである。
一般的な解釈では、偏差値50未満の大学や日東駒専未満の大学群を指すことが多い。さらに広義では、インターネット上でMARCH未満の大学全てをFランクと呼ぶ場合もあるが、これは実態に即していない用法とされる。
Fランク大学の特徴と問題点
検索結果によると、Fランク大学には以下のような特徴がある。一般試験で入学する学生が少なく、全体の約26%にとどまり、残りの約75%はスポーツ推薦や指定校推薦などで入学している。また、退学率が約15%と高く、偏差値50以上の大学の約5%と比較して3倍の水準となっている。
教育内容については、中学生レベルの講義が行われることも多く、英語ではアルファベットの書き方、数学では分数の計算から始まるケースもある。このような現状を受けて、学費に見合う教育効果が得られているかが疑問視されている。
Fランク大学廃止論の論理的根拠
学校教育法違反の指摘
廃止論者の最も強力な論拠は、Fランク大学の存在が学校教育法に違反するという指摘である。学校教育法第83条では、大学を「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」機関と定義している。
この定義に照らすと、研究活動を十分に行っていないFランク大学は、そもそも「大学」と呼ぶに値しないという論理が成り立つ。廃止論者は、このような機関は「総合学校」に格下げすべきと主張している。
税収の効率的配分
経済的観点から見ると、Fランク大学への補助金支給は税収の無駄遣いという指摘がある。現在、約592校の私立大学が「総合学校」レベルにあるとされ、これらへの補助金を年間約2,500億円削減し、代わりに国立大学の学費無償化に充てることが提案されている。
堀江貴文氏も「大学に入らないといい会社に就職できないとか言ってFラン私大に入るやつに私学助成金が税金から支払われてるのは問題」と指摘している。
労働力不足の解決
少子化により労働力不足が深刻化する中、Fランク大学を廃止することで若年層の早期就労を促進できるという論理もある。各世代100万人のうち30万人がFランク大学に通うと仮定した場合、その半数が2年制専門学校に、残り半数が高卒で就職すれば、年間22万5千人分の労働力が生まれる計算となる。
Fランク大学存続の必要性を主張する観点
社会的セーフティネットとしての機能
一方で、Fランク大学擁護論も根強く存在する。最も重要な論点は、Fランク大学が社会的セーフティネットとして機能しているという指摘である。日本の労働市場では大卒資格の有無が就職機会に決定的な影響を与えるため、Fランク大学であっても大卒資格を取得できることには意味がある。
さらに、若年層の安定的な就労は社会の治安維持にも重要な意味を持つ。定職に就けないことによる経済的不安定さは、時として反社会的な行動のリスク要因となり得るため、教育と大卒資格付与を通じた就労支援は社会全体の安定性を支える役割を果たしている。
博士人材の受け皿としての重要性
見落とされがちな観点として、Fランク大学が博士号取得者の貴重な就職先となっているという指摘がある。国内の大学や研究機関では研究職ポジションの数が博士号取得者の数を大きく下回っており、Fランク大学は高度な専門性を持つ研究者たちのキャリア形成において重要な役割を担っている。
研究現場を離れた教育現場での経験は、博士人材にとってコミュニケーション能力を磨く機会となり、将来的に民間企業での研究開発や技術営業において強みとなる可能性がある。
地域産業の担い手育成
地方の中小企業にとって、Fランク大学は重要な人材供給源となっている。元外交官の佐藤優氏は、「地域産業の担い手の育成と地場産業の継承に『人財』が不可欠」だとして、Fランク大学の存在意義を認めている。
地方都市においてFランク大学は、地域経済の担い手となる人材育成の場として機能し、地域の中小企業と連携してその土地に根ざした就職機会の開拓に貢献している。
経済・社会への多面的影響分析
雇用への影響
Fランク大学の廃止は、直接的に多くの雇用を失わせることになる。大学職員、講師、周辺の飲食店などのサービス業従事者など、幅広い業種に影響が及ぶ。特に、様々な分野の研究が衰退する可能性があり、講師のポストが減ることで文系分野の大学院進学者がさらに減少し、研究職を目指す人材の減少につながる懸念がある。
教育格差の拡大
Fランク大学の廃止は、教育機会の格差拡大につながる可能性もある。経済的な理由で難関大学に進学できない学生にとって、Fランク大学は学び直しの重要な機会を提供している。高校までの教育システムについていけなかった学生たちに「学び直しの機会」を提供し、基礎学力の向上と自信の獲得を支援している。
学歴社会の構造変化
一方で、冨山和彦氏は著書『ホワイトカラー消滅』で、日本的経営モデルからの脱却と高等教育の二極化を提唱している。「漫然とホワイトカラー予備軍を大量生産する昭和な大学モデルには一刻も早く別れを告げるべき」として、グローバル競争に挑む少数の大学と、圧倒的多数の人材を育む高等技能教育を行う大学への分化を主張している。
教育制度改革の方向性
実践的教育への転換
Fランク大学の問題解決には、教育内容の抜本的改革が必要である。佐藤優氏が指摘するように、商業高校や工業高校などの実務教育型の学校が教育困難校になりにくいのは、資格や技能取得の環境が整備されているためである。
大学教育においても、従来の教養教育に加えて実践的なビジネススキルの習得を重視したプログラムの導入が求められる。特に、自然言語(日本語と外国語)、コンピューター言語(プログラミング)、会計言語(簿記)の「3言語」の習得は、現代のビジネス環境で不可欠なスキルとなっている。
地域特化型教育の推進
地方のFランク大学は、その地域の産業に特化した人材育成機関としての役割を強化することで存在意義を高めることができる。地場産業との連携を深め、実践的な職業訓練と学位取得を両立させるプログラムの開発が重要である。
成果に基づく評価システム
現在の補助金制度を見直し、教育成果や就職実績に基づく評価システムの導入も検討すべきである。単に学生数を確保するだけではなく、卒業生の社会貢献度や企業での活躍ぶりを評価基準に含めることで、教育の質向上を促進できる。
今後の展望と社会への提言
2042年問題への対応
少子化の進行により、2042年度には現行の大学進学率が維持された場合、入学枠と受験者数の関係上、入学難易度が1段階下がる見込みである。MARCHが日東駒専レベルに、日東駒専が大東亜帝国レベルに、そして大東亜帝国は「受験生が消滅」する可能性が指摘されている。
この構造変化を見据えて、早期に教育制度の再編を行うことが重要である。市場原理による自然淘汰を待つのではなく、計画的な改革により混乱を最小限に抑える必要がある。
職業教育の充実
専門学校や高等専門学校との役割分担を明確にし、実践的な職業教育を提供する機関としてのFランク大学の位置づけを再定義することも一つの解決策である。「専門職大学」制度の活用により、学位取得と実務能力向上を両立させた教育プログラムの開発が期待される。
社会全体での価値観転換
最終的には、学歴偏重社会から能力重視社会への転換が必要である。企業の採用方針の変化と併せて、多様な教育経路を通じて社会に貢献できる人材を評価する仕組みづくりが求められる。
結論
Fランク大学の淘汰論は、教育の質向上と税収の効率的配分という観点から一定の合理性を持つ。しかし、社会的セーフティネット機能や地域産業への人材供給、博士人材の受け皿としての役割を考慮すると、一律廃止は適切ではない。
重要なのは、現状維持でも一律廃止でもなく、時代の要請に応じた教育制度の再編である。実践的職業教育への転換、地域特化型プログラムの開発、成果に基づく評価システムの導入により、Fランク大学を社会に真に貢献する教育機関へと変革することが可能である。
日本社会の持続的発展のためには、多様な教育機会の確保と教育の質向上を両立させる改革が不可欠である。今後の展望として、市場原理と公的支援のバランスを取りながら、すべての若者が自分の能力と志向に応じた教育を受けられる制度の構築を目指すべきである。
参考情報
- 株式会社インターン・コミュニティ「Fラン大学とはどんな大学?」 https://www.your-intern.com/plus/frankdaigaku-syuusyoku-furi/
- Weblio辞書「Fラン(エフラン)の意味」 https://www.weblio.jp/content/Fラン
- 札幌電子情報技術デザイン研究所「日本社会にFランク大学が不可欠な理由」 https://sapporodendrite.com/?p=17763


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