敵がいない状態で成功するには、戦う場所を慎重に選ぶ必要があります。競争を避けて静かに成果を出す戦略は、ビジネスの世界では「ブルーオーシャン戦略」と呼ばれています。この記事では、競争のない青い海で優位性を築き、持続的な成長を実現するための具体的な方法を解説します。
競争を避けることは賢明な選択
「競争を避けるのは卑怯だ」と考える方もいるかもしれません。しかし実際には、競争を避けることは非常に賢明な戦略です。現代のビジネス環境では、競争が激しい市場(レッドオーシャン)で闘うよりも、競争のない新市場(ブルーオーシャン)を創造するほうが成功への近道になります。
ブルーオーシャン戦略とは、従来存在しなかったまったく新しい市場を生み出すことで、新領域に事業を展開していく戦略です。新市場を創造することにより、他社と競合することなく事業を展開することが可能になります。この概念は、W・チャン・キムとレネ・モボルニュによって提唱されました。
競争のない市場を開拓するメリットは明白です:
- 価格競争に巻き込まれない
- 参入コストが低い場合が多い
- 独自のルールで市場を形成できる
- 先行者利益を獲得しやすい
レッドオーシャンとブルーオーシャンの違い
ビジネスの海には2種類あります。血で血を洗うような競争の激しい「レッドオーシャン」と、誰も手をつけていない「ブルーオーシャン」です。
レッドオーシャンの特徴
レッドオーシャンとは、競合企業との競争によって血塗られた既存の事業領域を指しています。レッドオーシャンでは、限られたパイを奪い合うため競争も激しく、競合との血みどろの戦いが不可避な状況になりがちです。このような市場では:
- 価格競争が激しい
- 商品の差別化が難しい
- 広告宣伝費が高額になる
- 利益率が低下しやすい
ブルーオーシャンの魅力
一方、ブルーオーシャンはまったく新しい市場です。競争相手がいないため、自社のペースでビジネスを展開できます。ブルーオーシャンでは、競争自体が無意味になり、高成長・高収益が期待できます。具体的には:
- 価格決定の自由度が高い
- 独自の価値提供が可能
- 広告宣伝費を抑えられる
- 安定した利益を確保しやすい
バリューイノベーションの実現方法
ブルーオーシャン戦略の大きな特徴は、低コストと差別化を同時に実現する点です。従来の競争戦略論では、この両立は困難とされていましたが、ブルーオーシャン戦略ではバリュー・イノベーションという方法で可能になります。
バリューイノベーションを実現するためには、「アクション・マトリクス」というフレームワークを活用します。これは以下の4つのアクションから構成されています:
- 増やす:業界の基準値よりも上回るべき機能は何か
- 付け加える:業界でいまだ例がない、実は付け加えるべき機能は何か
- 減らす:業界の基準値を下回ってもよい機能は何か
- 取り除く:業界が長く競合してきたが、実は取り除くべき機能は何か
このようにして、差別化と低コストを追求し、ブルーオーシャン戦略実現の土台を形作ります。
成功企業に学ぶブルーオーシャン戦略
実際にブルーオーシャン戦略で成功した企業の事例から学びましょう。以下は代表的な成功例です。
シルク・ドゥ・ソレイユの革新
シルク・ドゥ・ソレイユはブルーオーシャン戦略のお手本とされています。彼らは、当時のサーカス業界における競争要因を分析し、増やすもの・減らすもの、付け加えるもの・取り除くものを整理したことで、競争のないブルーオーシャンを創造しました。
具体的には以下のアクション・マトリクスを実践しました:
■増やすもの
- 美しくロマンティックなテント
■減らすもの
- 笑いや喜劇
- 危険性
■付け加えるもの
- テーマ性
- 洗練されたエレガントな環境
- 知的な洗練性
- 豊かな芸術性
■取り除くもの
- スターパフォーマー
- 動物ショー
- 館内のグッズ販売
- 隣接する舞台での同時ショー
この戦略により、サーカスファンとこれまでサーカスに興味のなかった層の両方を一気に獲得することに成功しました。
任天堂Wiiの大胆な決断
任天堂のWiiも、ブルーオーシャン戦略を活用して成功した好例です。当時のゲーム業界は、高機能化やゲーム性の高度化、リアリティの追求が進んでいました。
しかし任天堂は、従来のゲームファンではなく、ふだんゲームで遊ばない大人や小さい子どもを対象にした新市場を開拓しました。彼らはリアルな映像や複雑な機能は取り除き、その代わりに簡単な操作性や物理的なゲーム性を追求しました。
Wiiリモコンという直感的な操作デバイスを加えることで、カジュアルに遊べるゲーム体験を生み出し、競合のいない市場で成功を収めたのです。さらに、高度な機能を排除することでコスト削減にも成功し、ハード本体だけでも利益が出せるビジネスモデルを確立しました。
サウスウエスト航空のLCC革命
サウスウエスト航空は、LCC(格安航空会社)の先駆けとして、ブルーオーシャン戦略で航空業界に革命を起こしました。彼らが見つけた市場は「短距離を安く早く移動する」という、当時の航空業界では見過ごされていたニーズでした。
彼らのアクション・マトリクスは以下の通りです:
■増やす
- 移動スピード
- 1機あたりの回転率
■付け加える
- ローカル都市間の直行便
- 短距離移動
■減らす
- 価格
- ラウンジ
- 機内食
- 必要以上のサービス
- 豪華な設備
- 座席の広さ
- スタッフの数
■取り除く
- 座席の選択
- 複数の機種
- 搭乗券
このように、彼らは航空会社ではなく長距離バスをライバルと考え、「高速バスよりも早くて快適な移動手段」を新たに創出しました。フライトにおける必要以上の快適さや手厚いサービスを取り除きながらも、「飛行機なのに価格が安い」という価値を提供したのです。
あなたの会社でブルーオーシャン戦略を実践するには
あなた自身の会社やプロジェクトでブルーオーシャン戦略を実践するためのステップをご紹介します。
1. 戦略キャンバスで現状を可視化する
まずは「戦略キャンバス」を作成して、自社と競合の位置づけを明確にしましょう。戦略キャンバスの横軸に業界の各社が力を入れている競争要因を並べ、対象となる製品やサービスがそれぞれの要因において相対的に「高いのか」「低いのか」を判定してチャート化します。
これにより、どの企業がどの要因を重視しているのか、また、それぞれの製品やサービスがどのような位置付けにあるのかを視覚的に把握できます。特に重要なのは、顧客視点での競争要因を選ぶことです。
2. 四つのアクションで差別化を図る
戦略キャンバスを分析した後、「四つのアクション」を使って差別化の方向性を検討します:
- 取り除く:業界が当たり前としている要素で、実は不要なものは何か
- 減らす:標準以下に抑えられる要素は何か
- 増やす:標準以上に高めるべき要素は何か
- 付け加える:業界がまだ提供していない新しい価値は何か
3. 新市場を開拓するタイミングを見極める
ブルーオーシャン戦略を実行するタイミングも重要です。先行者(ファーストムーバー)として市場を開拓するメリットもあれば、後発参入者(セカンドムーバー)として既存市場を観察してから参入するメリットもあります。
- ファーストムーバーの利点:新市場において開拓者としてのポジションを維持するために必要なリソースやケイパビリティを誰よりも早く獲得できる
- セカンドムーバーの利点:ファーストムーバーの戦術を模倣したり、ファーストムーバーが苦労して開拓した顧客に後からアクセスできる
市場や自社のリソース状況を考慮して、最適なタイミングを選びましょう。
まとめ:静かに成果を出すための戦略
ブルーオーシャン戦略は、「誰もいない場所で、自分のやり方で、静かに結果を出す」ための具体的な方法論です。この戦略の核心は、「勝ちに行く」よりも「勝てる場を選ぶ」ことに集中することにあります。
今後、成熟産業で企業が持続的に成長していくためには、レッドオーシャンの中での戦いに明け暮れるのではなく、ブルーオーシャンにも積極的に進出していくことが重要になるでしょう。
あなたも自社のビジネスを見直し、誰も気づいていない新しい市場、つまりブルーオーシャンを見つけ出してみませんか?競争のない市場で静かに、しかし確実に成功を収めるチャンスがそこにあります。
【参考サイト】
- 野村総合研究所(NRI)「ブルー・オーシャン戦略 | 用語解説」 https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/blue_ocean.html
- SINCE2020「サーカスから動物ショーを消す勇気【ブルーオーシャン戦略の成功事例】」 https://since2020.jp/knowledgebase/case-study/1144/
- SINCE2020「高機能を切り捨てたWiiの英断」 https://note.com/since2018/n/naec04bdf51cc

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