基準の高い人との出会いは、自分自身の成長において計り知れない価値があります。そんな人の近くにいると、自分がいかに「ぬるま湯の常識」に浸かっていたかを痛感し、同時に「自分もこうなりたい」という理想像が鮮明に見えてくるものです。このように尊敬は単に誰かを遠くから眺めるものではなく、自分の中に眠る可能性を引き出す強力なスイッチになります。今回は尊敬のメカニズムと、それが自己成長にどのように貢献するかを深掘りしていきます。
「基準の高い人」が私たちに与える影響
基準の高い人の近くにいると、私たち自身の価値観や行動が変化していきます。これはなぜでしょうか。
私たちが無意識に抱く「ぬるま湯の常識」
多くの人は知らず知らずのうちに「ぬるま湯の常識」に浸かっています。これは環境に慣れ、無意識のうちに作り上げた自分なりのルールや考え方のことです。例えば「ぬるま湯の作り方」について考えてみましょう。マグカップでお湯と水を混ぜる時、一般的にはお湯を先に入れるのが正しいと考える人が多いものです。しかし、なぜそうしなければならないのか理由を尋ねると、「そうするものだから」という答えが返ってくるだけです。
このように私たちは多くの場面で、本当の理由も考えずに「そういうものだから」という常識に従って生きています。自分の仕事のやり方、人間関係の築き方、将来の計画の立て方まで、実はほとんどが「ぬるま湯の常識」に基づいているのです。
影響力のある人の特徴とは
影響力のある人、すなわち基準の高い人には以下のような共通点があります:
- 専門知識やスキルが高く、経験が豊富である
- 実績を出し、納期にきちんと間に合わせ、仕事の質が高い
- 笑顔が絶えず愛嬌があり、自分の意見をはっきりと言える
- コミュニケーション能力が高く、他人に関心を持っている
- 相手が誰であろうと分け隔てなく対等に振る舞う
こうした人々は単に優れているだけでなく、周囲の人に自発的な行動を促す力を持っています。彼らの側にいると「この人のためなら協力したい」「この人の言うことなら試してみたい」という気持ちが自然と湧いてくるのです。
心のスイッチが入るメカニズム
人間は理屈だけでは動きません。感情でも納得してはじめて行動に移せるのです。基準の高い人が周囲に与える影響力は、この「感情スイッチ」を適切に操作できることにあります。
人間とは「感情スイッチが入りっぱなしのコンピュータ」のようなもので、感情を止めることはできません。重要なのは、その感情がポジティブな方向に向くよう働きかけることです。尊敬する人の存在は、私たちの感情スイッチをポジティブな方向に切り替え、行動変容を促す強力なトリガーとなります。
「まだ見ぬ自分」を引き出す尊敬の力
尊敬とは単なる憧れ以上のものです。それは自己変革と成長の原動力となります。
尊敬は自己実現のための手段
「尊敬は自己実現のための手段にしかすぎない」という考え方があります。人生において尊敬できる人を見つけることは非常に重要です。なぜなら、尊敬できる人がいるということは、その人から「学びたい」と思えるということであり、その気持ちがそのまま自分の成長に直結するからです。
実際の例として、ある新卒社員が尊敬する上司の行動を真似た話があります。その上司が常に電卓を持ち歩いていたことに気づき、理由を聞いたところ、「営業数字をすぐに計算できるようにするため」という答えでした。この新人は「この人かっけー!」と思い、すぐに自分も同じような電卓を購入したのです。
この行動の背景には「自分が理想としているビジネスパーソン像に近づきたい」という欲求があります。学ぶの語源は「まなぶ→まねぶ→真似ぶ」と言われるように、学びは真似ることから始まります。尊敬する人の存在は、具体的な行動指針を与えてくれるのです。
自己尊重から始まる成長サイクル
マズローの欲求階層説における「尊重の欲求」は「自分を大切にしたい」という欲求であり、自己尊敬や自尊心、他者からの承認などを含みます。基準の高い人のそばにいると、自分自身への期待値も高まり、自己尊重の意識が芽生えます。
「自分が尊敬できる人間になる」というnoteの記事では、沖縄料理の屋台大将の例が挙げられています。この大将は決して完璧な人間ではなく、料理が特別上手いわけでも、仕事が早いわけでもありませんでした。しかし、その生き様は恰好よく、常に自分の成長に対して意欲的でした。
筆者はこの大将から「どこまでも自分の成長に対して意欲的であること」の重要性を学び、それを自分の人生に活かそうと決意しています。これこそが尊敬の本質であり、他者を通じて自己変革を促す力なのです。
ロールモデルを活用して自分を高める方法
基準の高い人を見つけたら、どのように活用すればよいのでしょうか。ここでは具体的な方法を紹介します。
効果的なロールモデルの選び方
ロールモデルとは、考え方や行動のお手本になる人物のことです。ビジネスにおいては能力や働き方、キャリア形成のモデルになる人を指します。効果的なロールモデルを選ぶポイントは以下の通りです:
- 自分の観察できる範囲で印象的な人
- 自分よりも高いレベルのリーダーシップを発揮している人
- 学び取りたい行動ができている人
すべてを模倣する必要はありません。「リーダーシップにおいてはAさん」「同僚とのコミュニケーション力においてはBさん」というように、テーマ別にロールモデルを立てることで、それぞれから効果的に学ぶことができます。
尊敬する人から学ぶ三つのステップ
尊敬する人を見つけたら、次の三つのステップで学びを深めていきましょう。
1. 具体的な行動特性を観察する
まずは尊敬する人の具体的な行動に注目します。単に「素晴らしい」と感じるだけでなく、その人が何をどのように行っているのかを詳細に観察します。例えば会議での発言の仕方、問題解決のアプローチ、人との関わり方などを具体的に把握しましょう。
2. 自分との違いを「学ぶ」
尊敬する人の良い方法、やり方、考え方を真似て自分との違いを「学ぶ」ことが重要です。過去の自分の失敗を受け入れ、新たに良い方法を身につけていきます。これにより、悪いやり方と良いやり方を同時に知ることができ、自分をブラッシュアップする材料になります。
3. 尊敬する人を「ほめる」
最後に尊敬する人を「ほめる」ようにしましょう。きちんと言葉にして「素晴らしい」と伝えることが、学ばせていただく「礼儀」であり、「ありがとうございます」という感謝の気持ちでもあります。これにより尊敬する人との関係も深まり、さらなる学びのチャンスが生まれます。
自己変革への一歩を踏み出す勇気
基準の高い人との出会いは、自己変革への気づきを与えてくれますが、実際に行動に移すには勇気が必要です。
「何もわからないなりに挑戦する」という姿勢
「今の自分を変えたい、変える必要がある。でもその勇気が出ない、どうすればよいか分からない」という状況に陥ることは誰にでもあります。しかし、変化を恐れて何も行動しなければ、成長の機会を逃してしまいます。
大切なのは「何もわからないから挑戦しない」ではなく「何もわからないなりに挑戦する」という姿勢です。たとえ失敗するかもしれなくても、一歩踏み出せたことに価値があります。それが自信につながり、次の挑戦を促すのです。
言葉スイッチで行動を変える
自分の言葉遣いを変えることで、行動や思考も変えることができます。これを「言葉スイッチ」と呼びます。例えば以下のような言い換えを実践してみましょう:
- 「さあ、もう仕事をしなくちゃ」→「さあ、仕事に取りかかる準備ができた」
- 「成功するようにがんばっている」→「私は日々、成功に近づいている」
- 「これは本当に大変だ」→「これは本当に簡単ではない」
このような言葉の変化は、単なる言い回しの違いではありません。あなたの人生のスイッチを押し、行動変容を促すものなのです。
結論:尊敬を自己成長のエンジンに
基準の高い人のそばにいると、私たちは自分の現状を見つめ直し、新たな可能性を感じることができます。尊敬とは単に誰かを遠くから眺めることではなく、自分自身の変化を促す「心のスイッチ」なのです。
尊敬する人を見つけ、その人から学び、自分を変えていく勇気を持ちましょう。心理学者アンリ・フレデリック・アミエルの言葉を借りれば「心が変われば行動が変わる、行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる、人格が変われば運命が変わる、運命が変われば人生が変わる」のです。
「まだ見ぬ自分」を引き出すためには、尊敬という心のスイッチを入れ、具体的な行動に移していくことが大切です。自分の限界を決めつけず、基準の高い人から学び続けることで、あなたの成長は加速していくでしょう。

コメント