みなさんは「敵」と聞いて、どのような存在を思い浮かべるでしょうか。戦争小説なら当然、対立する国の兵士を想像するかもしれません。しかし、逢坂冬馬氏のデビュー作『同志少女よ、敵を撃て』は、そんな単純な二元論を根底から覆し、読者に「本当の敵とは何か」という深遠な問いを投げかけます。
本屋大賞を受賞したこの話題作は、表面的には独ソ戦を舞台にした戦争小説です。しかし、その真価は戦闘シーンの迫力にあるのではありません。主人公セラフィマの心の変遷を通して描かれる「敵の概念の変容」こそが、この作品を単なるエンターテインメントから哲学的な傑作へと昇華させているのです。

コメント