会社で生き残るための「後ろ向きな手法」の実態と対策


会社員として出世し、組織内で生き残っていくためには、実績を積み重ねたり、建設的なロビー活動を行ったりする正攻法が理想的です。しかし現実の職場では、そうした前向きなアプローチとは正反対の、極めて後ろ向きで陰湿な手法を用いる人々が存在します。これらの手法は一時的な成功をもたらすかもしれませんが、長期的には組織全体の健全性を損ない、個人のキャリアにも悪影響を及ぼす危険性があります。

職場に潜む「後ろ向きな出世手法」の実態

情報操作と遮断による相手の失敗誘導

最も陰湿で効果的とされる手法の一つが、情報の意図的な遮断です。個人的感情での不仲の最終目的は、ただ一つ「相手を消す」ということであり、そのために行う手段の一番の典型が、その人が知っておかなければいけない情報をわざと知らせなかったり、嘘をついて偽の情報を流したりする「情報の遮断」という行為です。

この手法が選ばれる理由は明確です。正しい情報を伝えないことで、多くの社員は「ほぼ自動的に」ミスをします。重要な会議の日程変更を伝えない、プロジェクトの仕様変更を共有しない、顧客からの要望を意図的に伝達しないなど、様々な形で実行されます。その結果、対象者は必然的に失敗し、責任を取らされて失脚するという流れが完成するのです。

手柄の横取りと責任転嫁

人の手柄を当たり前のように横取りする人物や、自分のミスの責任を人に平気でなすりつける人というのは、どこの職場にもいるものです。このような行為は、過剰な自己愛によるゆがんだ認知システムが関係しています。

具体的な手口としては、同僚から相談を受けた企画について、一緒に改良するという名目で優秀なアイデアを聞き出し、それを自分の名前で上司に提出するケースがあります。また、自分が指示した内容にミスがあった場合でも、部下に責任を押し付けて始末書を書かせるなど、権力を悪用した責任転嫁も頻繁に行われます。

陰湿な報復と嫌がらせ

上司や会社の方針に懸念を表明したり、正式な手続きを利用して異議を申し立てた従業員に対する報復も深刻な問題です。こうした陰湿な(秘密裏に行われることもある)報復は著しく有害といえ、何年も発覚せず、名前も挙げられず、報告もされないまま続く可能性があります。

具体的な報復手法には以下のようなものがあります:

  • コーチング、フィードバック、専門能力開発の機会を与えない
  • プロジェクトや部門に十分な予算や人材を与えない
  • わざと難しいタスクを与えて、サポートはほとんどしない
  • 重要な会議から排除したり、職務に不可欠な情報を与えない

社内政治を利用した派閥形成

学閥や主流派、反主流派などの「派閥」という名のインフォーマルグループも、出世競争の道具として利用されます。これらの派閥が「趣味の仲間」と違うのは、「利害」で結びついている集団だという点です。インフォーマルグループでありながら「社内政治」に深く関わっているため、出世争いや利権争いなどを引き起こす可能性があります。

陰湿ないじめや嫌がらせ、だまし討ちに裏工作、足の引っ張り合いなど、企業小説も真っ青なドロドロの派閥闘争が実在する職場も存在します。本人たちは決してネガティブなグループではなく、「○○さんを中心としたほうが会社は良くなる」と自らを正当化し、そこに経営トップを巻き込もうとするのです。

後ろ向き手法を使う人の心理と特徴

メタ認知の欠如と短絡的思考

社内政治が弱い人はメタ認知が弱く、「自分の考え方や行動を客観的に把握し、調整する能力」が不足していることが多いです。しかし、後ろ向きな手法を使う人々は逆に、相手の弱点を見抜く能力に長けている一方で、自分の行為が組織全体に与える悪影響については考慮しません。

何でも一撃で仕留めようとする傾向があり、根回しせず一気に承認に迫る、1回のプレゼンで全員の賛同を得ようとする、協力者を得ずに一人で改革案を提出するなど、極端な行動をとりがちです。ただし、これは建設的な目的ではなく、他者を蹴落とすための戦略的行動として現れます。

権威への過度な依存

ごますりする人は周囲から「権威に弱い人」というイメージを持たれることが多く、権威のある人、自分より立場が上の人には好かれておいて損はないと、積極的によいしょする傾向があります。また、これまでごますりしていた相手であっても、利益がないとわかれば途端に態度を変える計算高い一面も見られます。

組織への深刻な影響

生産性とイノベーションの阻害

「情報を遮断する社員」というのは、単に会社に損失をもたらす「赤字社員」に過ぎません。どのような理由があろうとも、会社側は情報を遮断した社員を放置せず、指導する必要があります。このような社員が一旦社内に居座ってしまうと、なかなか数字の改善はできなくなります。

大手小売企業のCEOを10年以上務めたマークは、報復的な人物として知られていました。マークの引退後、新CEOが従来の経営幹部と協力関係を築く中で、マークがいなくなっただけでは、従業員の不安が消えないことがすぐに明らかになりました。マークの報復により、イノベーションが滞り、企業文化がダメージを受け、ビジネスは停滞したのです。

心理的安全性の破綻

陰湿な報復や嫌がらせは、ターゲットとなった人物のキャリアを台無しにし、自己肯定感を下げ、チームワークにもダメージを与えます。基本的に心理的安全が確保されていて、イノベーションが盛んで、チームワークを図りやすい文化を構築するためには、陰で起こっている報復に注意を払う必要があります。

職場のいじめは、被害者・加害者だけの問題ではありません。会社には職場いじめを防止する義務があり、企業にはこれらのハラスメントを防止する義務があります。

後ろ向き手法への対処法

情報の透明性確保

いい情報も悪い情報もオープンにして「良い循環」を作ることが重要です。人間というのは、自分にとって良い情報は自らすぐ報告したがりますが、反対に都合の悪い情報は隠したがる傾向があります。情報を自分だけで囲い込んでしまうような「癖」のある社員は、それだけで組織においてはハイリスクですので注意が必要です。

そのような気質の社員がいても、会社そのものが常に情報をオープンにせざるを得ない職場環境を作っておけば、こうした問題は起こりません。

派閥との適切な距離の維持

派閥に対しては「その存在を認識するに留め、どの派閥とも一定の距離を置く」というスタンスを守ることが重要です。どんな会社でも「インフォーマルグループとしての派閥は存在する」と認識した上で、その存在を意識しない、色眼鏡で見ないことが大切です。

中途半端に知るくらいなら、そうした情報を一切シャットアウトするほうがいいとさえ言えます。「誰々は○○派らしい」「誰々は△△専務といつもつるんでいる」といったウワサがあっても、よくよく聞くと、「たまたま同じ沿線なのでよく帰りが一緒になるだけで、仕事上のつながりはない」などというのは、よくある話です。

メタ認知能力の向上

組織でうまくやっていく(というか少なくとも生き残る)ためには「自分がどの立ち位置にいるか」「自分の発言が相手(組織)にどんな影響を与えるか」を理解するメタ認知を育てることが大切です。

自分の考え方や行動を客観的に把握し、調整する能力を身につけることで、他者の後ろ向きな手法に巻き込まれることを防ぎ、同時に自分自身がそうした行為に走ることも避けられます。

健全な職場づくりの重要性

出世の動機づけの見直し

42.5歳を境に出世意欲が低下するという調査結果からも分かるように、出世という動機づけだけでは長期にわたって働く意欲を維持することは困難です。入社以降ずっと出世だけを目的にしていると、40歳を超えてから、いきなり転換し、違う動機づけをするのは難しいのです。

自分らしい意味に基づく内的な動機づけが同時に必要であり、調査からも、ミドル・シニア世代で生き生きと働いている人は、動機づけの中心が出世ではなく、「自分の専門性をより高めていきたい」など、仕事そのものにあることが分かりました。

企業の責任と義務

企業には、ハラスメントを防止する義務があります。職場における性的な言動や妊娠・出産などによって労働者が不利益を受けたり、就業環境を害したりすることがないように防止措置を取ることが企業に義務づけられています。

相談をすれば、真摯に受け止め、適切に対応してくれるはずです。職場のいじめや後ろ向きな手法に遭遇した場合は、一人で抱え込まず、上司や人事、社内の相談窓口に報告することが重要です。

結論:持続可能なキャリア形成のために

会社員として生き残り、出世していくために「後ろ向きな手法」を使う人々は確実に存在しますが、これらの手法は一時的な成功をもたらすかもしれない一方で、組織全体の健全性を損ない、長期的には自分自身のキャリアにも悪影響を及ぼします。

真に持続可能なキャリア形成のためには、実績を積み重ね、建設的なコミュニケーションを心がけ、組織全体の利益を考えた行動を取ることが不可欠です。そして、後ろ向きな手法に遭遇した際には、適切に対処し、健全な職場環境の構築に貢献していくことが、結果的に自分自身の長期的な成功につながるのです。

今後の職場では、多様性を尊重し、透明性を重視し、心理的安全性を確保した環境づくりがより一層重要になってきます。個人としても組織としても、これらの価値観を大切にしながら、健全で生産的な働き方を追求していくことが求められています。


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