## 不正競争防止法2条1項20号の基本的な理解
不正競争防止法2条1項20号は、品質等誤認表示を規制する重要な条文です。この条文は「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為」を不正競争行為と定めています。
43歳のマーケティング部門マネージャーとして、この法律を理解しておくことは、競合他社との攻防において極めて重要です。品質等について誤認させるような表示をしていれば不正競争行為となり、ライバル企業は差止請求、損害賠償請求ができるからです。
「品質」「内容」の範囲の広さ
注目すべきは、「品質」や「内容」の範囲が非常に広いことです。法律の専門書によると、「品質」については「商品の原産地・製造者、原料の仕入先・仕入方法なども、品質の如何を間接的に推認させる事実として、『品質』についての表示に該当しうる。販売量の多寡、業界における地位、企業の歴史、取引先、提携先や創業年代などの『営業』を詐称する表示についても、営業の詐称にとどまらず、商品の品質や役務の質の如何をも表示していると見られる場合には、『品質』についての表示に該当する」とされています。
景品表示法との違いと戦略的優位性
不正競争防止法2条1項20号の大きな優位性は、景品表示法との運用の違いにあります。景品表示法は消費者庁などの行政が品質誤認表示をした者に対応するのに対し、不競法では差止請求(不競法3条)・損害賠償請求(不競法4条)によって、直接ライバル企業を訴えることができます。
行政の人員は限られているため、すべての違反に対応してくれるわけではありません。しかし、不競法なら民事訴訟を提起することは裁判を受ける権利によって保護されている権利ですから、確実に裁判所に取り扱ってもらえます。
損害賠償における推定規定の活用
さらに重要なのは、不競法2条1項20号では損害について不競法5条2項の推定を受けられることです。この推定規定により、侵害者が侵害行為により受けた利益の額を被侵害者の損害額と推定することができ、立証の困難性が緩和されます。
特許表示と品質誤認の関係性
特許権侵害訴訟との関連で特に注目すべきは、虚偽の特許表示が品質誤認表示にあたる可能性です。実際の裁判例では、「一般に、商品に付された特許の表示は、当該商品が特許発明の実施品であると受け取られる。それで、そのような表示は、当該商品が独占的に製造・販売されているかのような情報や、商品の技術水準に関する情報を提供するものとして、不正競争防止法2条1項13号にいう『品質』の表示といえる」と判断されています。
特許失効後の表示継続のリスク
この判例では、特許が失効したにもかかわらず「国際的な特許で保護されている」「特許を取得している」といった表示を継続することが、品質等誤認惹起行為に該当すると判断されました。これは、競合他社にとって絶好の攻撃材料となり得ます。
訴訟戦略としての活用可能性
交渉カードとしての価値
特許権侵害訴訟が発生した場合、被告となった企業は「多少のコストなど構わず何が何でも交渉のためのカードは欲しい」状況になります。このような状況下では、相手方の虚偽の特許表示を不正競争防止法違反として反訴することは、極めて有効な戦術となります。
反訴のメリットとして、実質的に同じ紛争が別々の裁判により扱われることによる矛盾した判決の回避、審理の重複回避による訴訟経済の実現があります。
訴訟提起のコストと効果
民事訴訟では、損害賠償請求において、まず相手との交渉を行うのが基本です。しかし、交渉が不調に終わった場合、訴訟提起という選択肢があります。43歳のマーケティング部門マネージャーとして考えるべきは、訴訟提起のコストと、それによって得られる戦略的効果のバランスです。
判決の永続性とインターネット公開
重要な点として、裁判の判決は永続的な効果を持ちます。東京地裁では、最高裁判例集に掲載された裁判や一定の報道があった重要な憲法判断を含む裁判について、記録を永久保存する要領を定めています。
また、民事裁判の記録は原則として誰でも閲覧が可能であり、裁判の結果がインターネット上で長期間参照される可能性があります。これにより、不正競争防止法違反の認定を受けた企業は、その事実が半永久的に残り続けるリスクを負うことになります。
法的リスクと注意点
濫用的訴訟のリスク
ただし、根拠のない訴訟提起は不法行為となるリスクがあります。裁判例では「当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるとき」には不法行為が成立するとされています。
虚偽事実告知のリスク
特許権侵害の警告が後に無効とされた場合、不正競争防止法2条1項15号の虚偽事実告知にあたる可能性もあります。このリスクを回避するためには、十分な調査と検討が必要です。
実践的な対応策
43歳のマーケティング部門マネージャーとしては、以下の点に注意して戦略を立てることが重要です:
自社の表示の点検: 特許表示、品質表示、企業の歴史等の表示について、虚偽や誤認を招く内容がないか定期的に点検する。
競合他社の表示監視: 競合他社の広告や製品表示について、不正競争防止法違反となる可能性のある表示を監視する体制を整備する。
法的根拠の確保: 訴訟提起を検討する場合は、十分な事実的・法律的根拠を確保し、濫用的訴訟とならないよう注意する。
専門家との連携: 不正競争防止法の運用は複雑であるため、知的財産法に精通した弁護士との連携体制を構築する。
不正競争防止法2条1項20号は、適切に活用すれば強力な企業防衛ツールとなり得ますが、同時に濫用のリスクも伴います。バランスの取れた戦略的活用が求められます。
参考情報
- 弁護士法人クラフトマン「品質等誤認惹起行為(不競法2条1項20号)」 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/fukyouhou/index/fuseikyousou_13gou/
- 木場法律事務所「もっと使える不競法2条1項20号(品質誤認表示)」 https://www.yu-kobalaw.com/notes/column-1201/
- 弁護士法人クラフトマン「製品の特許表示と品質等誤認惹起行為」 https://www.ishioroshi.com/biz/mailmag/topic/topic20130430/

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