久しぶりに会う知人が自分たちの運営するサービスを知らずに利用している–これこそがtoCサービスの醍醐味です。この一見シンプルな状況に隠された価値と魅力について探ってみましょう。toCサービスが持つ独自の感動体験、成功要因、そして実際のビジネスにどのように活かせるのかを詳しく解説します。
toCサービスが生み出す「見えない繋がり」の価値
toCサービスの最大の魅力は、知らず知らずのうちに人々の生活に溶け込み、価値を提供している実感を得られることです。Voicy代表の緒方氏は「toCサービスこそインターネットの醍醐味」と表現しています。この言葉には深い意味があります。
生活を変える手触り感
toCサービスの提供者にとって、日常生活の中で自社のサービスが使われている様子を目にすることは何物にも代えがたい喜びです。「電車で隣の席の人がメルカリを使っているのを見る」「友達がカウカモで家を買った」など、生活をより良く変えていく手触り感を得やすいのがtoCサービスの特徴です。
実際にVoicyで働く水橋氏は、母親が自分の勤める会社のサービスを利用し始め、ちきりんさんやはるさんの音声コンテンツを聴くようになったことで、外国株の話をするようになった様子を見て感動を覚えたと語っています。これは単なるサービス普及の喜びを超えた、人生を豊かにする価値の提供を実感できる瞬間です。
知らぬ間に広がるサービスの輪
akippaのCEOである金谷氏も同様に「久しぶりに会う知人が、私たちが運営していると知らずにサービスを利用してくれてる。これぞtoCサービスの醍醐味」と述べています。これは何を意味するのでしょうか。
それは、自分たちのサービスが「知人の紹介」や「広告」といった直接的なきっかけなしに、純粋に価値を認めて選ばれていることへの喜びです。知らないうちにサービスが人から人へと広がっていく-これこそがtoCサービスならではの醍醐味と言えるでしょう。
toCサービス成功の3大要素
トリビューの長澤氏によると、toCサービスが新しい市場を創出する際に重要なのは次の3点です:
- 安心・安全の提供
ユーザー一人ひとりに安心と安全をもたらすことが基本です。特に個人情報や決済に関わるサービスではこの要素は不可欠です。 - 情報の非対称性解消
サービス提供者と利用者の間にある情報格差を埋め、透明性を高めることで信頼を構築します。口コミやレビューの活用がこれに大きく貢献します。 - 利便性の高い取引の実現
ユーザーの時間や労力を節約し、スムーズな体験を提供することでリピート利用を促進します。
これらの要素はメルカリが不要品の市場(潜在的には7.6兆円規模)をデジタルプラットフォームで活性化させた例にも見ることができます。
消費者が感じる3つの喜びをデザインする
マーケティングプロデューサーの松尾氏は、消費行動に関連して消費者が感じる喜びを3種類に分類しています:
「買う喜び」:満足感と達成感
「買う」という行為自体が脳にとって報酬となり、エンドルフィン(脳内麻薬)の分泌を促します。この喜びをうまく活用したサービス設計が重要です。決済フローがスムーズで、購入後の確認メールがスタイリッシュであるなど、購買体験そのものを満足度の高いものにすることが求められます。
「使う喜び」:体験の質で差別化
パソコンやスマートフォン、自動車など娯楽的要素も強い製品は、それらを楽しむことから得られる喜びがあります。サービスで言えば、飲食店やレジャー施設はまさに利用することが最大の喜びです。UIやUXのデザイン、使いやすさ、パフォーマンスなどが差別化要因となります。
「持つ喜び」:所有感がもたらす価値
所有していること自体が喜びを与えてくれる商品もあります。高級ブランドはその典型例です。一般的な実用品でも高いデザイン性を付与することで「持つ喜び」を感じさせることが可能です。
小売・飲食店舗やサービスでは、顧客の好みや特性に応じたカスタマイズにより「ここは私のお店、施設」という擬似的な所有感を与えることができます。会員制度や個人化された体験の提供がこれにあたります。
toCサービスの成功事例から学ぶ
ニトリのバーチャルショールーム
ニトリでは、東京都目黒区の「ニトリ目黒通り店」の家具フロアを3Dの模型データで再現したバーチャルショールームを公式通販サイトで公開しています。バーチャル空間上で自由に移動でき、各商品についた「丸いピン」をクリックすると、そのままオンラインで購入できる仕組みです。サイトを離脱することなく「シームレスな買い物体験」を提供しています。
スターバックスのサードプレイス戦略
スターバックスは店舗に「サードプレイス(家でも職場でもない第3の場所)」という位置づけを行い、そのコンセプトに沿った体験を提供しています。インテリアやBGM、スタッフの雰囲気なども一貫性があり、落ち着く店内を演出することで顧客体験を高めています。機能的な価値だけでなく「情緒的な価値づくり」に取り組んでいる点が注目に値します。
Voicyの音声コンテンツ革命
Voicyでは、ユーザーが音声コンテンツを通じて新しい価値観や人生観を見つける機会を提供しています。ある利用者は「Voicyフェスの音声を聴いて、幸せの定義が変わった」と語っています。これはサービスが単なる機能提供を超え、人生に変化をもたらす可能性を示しています。
効果的なマーケティング手法
口コミ(ワード・オブ・マウス)マーケティング
Word-of-mouth marketing(口コミマーケティング)は、消費者の日常会話の中で企業の製品やサービスへの関心が反映されるマーケティング手法です。これは消費者の期待を超える経験によって引き起こされる自然な広告効果です。調査によると、消費者の88%が従来のメディアよりも友人からの推薦を信頼しています。
リファラルマーケティングの活用
リファラルマーケティングは口コミの力をビジネスに活用する手法です。特にB2B企業では、リファラルマーケティングが既存顧客のCRMを通じて新規顧客を増やすための重要な施策となります。高単価商材を扱うB2C企業でも効果的です。
実際、B2Bサービス企業の経営幹部に対する調査では、リファラルの重要性が高く評価されています。個人的な推薦は信頼度が高く、新規顧客獲得の効率的な方法となります。
カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上
顧客体験(CX)とは「消費者が商品やサービスを認知する段階から、商品の購入、その後の利用の中で得られる一連の体験」のことです。CX向上は多くのビジネスが取り組むべき重要な施策です。
ザ・リッツカールトンホテルでは、従業員に1日2,000ドル(約24万円)という高額な決裁権を与え、「お客様のために」と思えば通常では考えられないサービスも提供できるようにしています。このような顧客中心の姿勢がブランド価値を高めます。
toCサービスでキャリアを築く魅力
創業者や経営者の近くで働く醍醐味
ベンチャー企業でtoCサービスに関わる魅力の一つは、創業者や経営者の近くで仕事ができることです。自分の意見を直接伝えられる距離感があり、大きな意思決定に関わることができます。
サービスが社会に広がる喜び
Voicyのスタッフは「サービスが世に広がって、新しい価値観や人生観を見つけられる人が増えることが嬉しいから働いている」と語っています。自社のサービスが社会に良い変化をもたらす様子を直接見られることは大きなモチベーションとなります。
市場を創出する醍醐味
日本発のtoCサービスが大きく成長する例が以前に比べて少なくなっている中、特定の領域に特化することで成長の可能性があります。グローバルプラットフォーマーが強い中でも、日本市場の特性を活かした新たな市場創出に挑戦できる点がtoCサービスのキャリアとしての魅力です。
toCサービス成功のための実践ポイント
1. ユーザーの声を活かす仕組み作り
ARTISTIC&CO.GLOBALの事例では、口コミツールU-KOMIを導入し、レビューを自動的に集計することでお客様の声をダイレクトにサービス改善に反映できるようになりました。リソースが限られる中でも効率的にユーザーの声を集める仕組みが重要です。
2. 差別化された体験の提供
スターバックスのように「情緒的な価値づくり」に取り組み、機能的な価値だけでなく、感情に訴える体験を提供することが差別化につながります。季節ごとのキャンペーンやARなどの技術も活用し、常に新鮮な体験を提供し続けることが大切です。
3. 口コミを促進する仕組み
口コミは最も信頼度の高いマーケティング手法です。期待を超える体験を提供し、それを共有したくなる仕掛けを用意することで、自然な口コミが生まれます。リファラルプログラムの導入も検討価値があります。
toCサービスの未来と可能性
デジタル技術の進化により、toCサービスの形態も多様化しています。バーチャルショールームやオンラインとオフラインを融合させた体験など、新たな顧客体験の創出が進んでいます。
また、個人の好みや行動に合わせたパーソナライゼーションの進化も見逃せません。NANO universeの事例では、店舗に設置した端末と顧客のスマートフォンを連動させ、ECサイトの閲覧・購入履歴を基に最適な商品をレコメンドする取り組みが行われています。
toCサービスは単なるビジネスモデルを超え、人々の生活を豊かにする可能性を秘めています。サービス提供者が感じる「醍醐味」とは、自分たちの創造したものが世の中に浸透し、人々の生活に自然に溶け込んでいく様子を実感できる喜びなのです。
まとめ:toCサービスが生み出す感動の連鎖
toCサービスの真の醍醐味は、知らないうちに広がり、利用者の生活に溶け込み、価値を提供し続ける「見えない繋がり」にあります。友人や知人が自然とサービスを利用している場面に出会った時、それは単なるビジネス成功の喜びを超えた感動をもたらします。
「買う喜び」「使う喜び」「持つ喜び」という消費者心理を理解し、「安心・安全」「情報の非対称性解消」「利便性」を追求することが、成功するtoCサービスの基本です。そして何より、ユーザーの人生に前向きな変化をもたらす価値の提供こそが、最も深い感動と共感を生み出します。
toCサービスに関わることは、人々の生活に直接触れ、社会に変化をもたらすやりがいのある挑戦です。その道は決して容易ではありませんが、「知らないうちに広がる感動の連鎖」を創り出せたとき、それこそがビジネスの真の醍醐味と言えるのではないでしょうか。
参考サイト:
- note「toCサービスで働く醍醐味を感じた話|みのりー @Voicy」 https://note.com/minori_m/n/n8ab8662418cf
- note「toCサービスこそインターネットの醍醐味なんじゃないか」 https://note.com/ogaken/n/nf49e2173929d
- FAST GROW「なぜ『美容医療』市場で、メルカリ並みのtoCサービスが生まれるのか」 https://www.fastgrow.jp/articles/tribeau-mou-mgp-nagasawa

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