「許可より謝罪」の考え方:日本のビジネス文化におけるグレーゾーン行動の実態


「グレーゾーンは黙ってやった方がいい。怒られたらそれから考えたらいい話よ。先に確認するとNGになるのが日本というもの。」このような考え方は、ビジネスの現場で時折耳にする意見です。この記事では、この「まずやって、後で謝る」という行動原則の背景、メリット・デメリット、そして日本のビジネス環境における適用について検討します。

「許可を求めるな、謝罪せよ」の原則とその起源

「許可を求めるな、謝罪せよ」という考え方は、英語では「It’s easier to ask forgiveness than it is to get permission」(許可を得るより許しを乞う方が簡単)と表現され、プログラミング言語COBOLを開発したグレース・ホッパーの言葉とされています。また、別のバリエーションとして「If it’s a good idea, go ahead and do it. It is much easier to apologize than it is to get permission」(良いアイデアならやってしまえ。許可を得るより謝る方が簡単だ)という表現もあります。

この原則は企業文化として、特に3M社の社是としても知られており、「組織の中で何か新しいことを始める時、許可が下りるのを待っていたらチャンスを逃すので、とりあえず始めてしまってダメだったら謝罪しましょう」という思想を反映しています。

日本のビジネス文化における「事後謝罪」vs「事前承認」

日本的な意思決定プロセスの特徴

伝統的な日本のビジネス文化では、意思決定において「根回し」や「稟議」といったプロセスが重視され、事前に関係者の合意を得ることが一般的です。しかし、このプロセスは時間がかかり、ビジネスチャンスを逃す原因にもなりえます。

興味深いことに、リーンシックスシグマに関する英語の文献では、日本の「根回し」文化が効果的な方法として紹介されているケースもあります。コンセンサス(総意)を得てから実行に移すことで、実行段階でのスピードが上がるとされています。

「事後承認」の実態

日本企業においても、「事後承認」という形で柔軟な対応がなされるケースがあります。例えば、日経新聞の記事では、「ニクレンジャー」のコラボ企画において、多くの企業が事後承認に近い形で実施していたことが報告されています。

また、リモートワークの普及によって「決裁時の承認印が電子メール承認で代替、一部のプロセスの事後承認化」が進んでいるという指摘もあります。こうした変化は業務効率化につながる一方で、「不正の余地」を生み出す懸念もあります。

「黙ってやる」アプローチのメリットとリスク

メリット:イノベーションと意思決定の迅速化

「許可を求めるな」の原則を支持する人々は、この考え方がイノベーションを促進し、官僚的な障壁を乗り越えるのに役立つと主張します。箕輪氏の例では、「会社に黙ってオンラインサロンを始め、サロンの収益が増えて会社に隠せなくなったときに理由を後付けで会社にもメリットがあることを説明して許してもらった」というケースが紹介されています。

この考え方は「実績さえあれば理由を後付けして案外何とかなることも多い」という経験則に基づいており、特に革新的なアイデアの実現において有効と考えられています。

リスク:組織の信頼性とコンプライアンス上の問題

一方で、「黙ってやる」アプローチには重大なリスクも存在します。企業のコンプライアンスや内部統制の観点からは、「会社のためにやっている」という個人の判断が不正行為の温床になりかねないという指摘があります。

特に不正のトライアングル理論では、「正当化」は個人の内面の問題(道徳意識、倫理観、プライドなど)でもあり、不正を「正当化」しない組織風土や組織文化が必要とされています。

バランスの取れたアプローチ:「カーボーイ的な根回し」

日本的な「事前承認」と米国的な「事後謝罪」の中間として、「カーボーイ的な根回し」という折衷案が提案されています。これは「許可を求めず積極的に根回しする」アプローチで、根回しに失敗した場合は素直に謝るという方法です。

このアプローチでは、完全に無断でやるわけではなく、関係者への情報共有や協力の取り付けを行いつつも、形式的な承認プロセスに時間をかけすぎないバランスを取ります。

グローバルなビジネス環境における時間感覚の違い

日本と海外では時間の感覚にも違いがあります。モノクロニック文化(アメリカ・日本など)では「スケジュールや締め切りを事前に確認し、きっちり守る」ことが重視されますが、ポリクロニック文化(インド・ラテンアメリカなど)では「多少の遅れや予定の変更」が想定されています。

異なる文化間でのビジネスでは、こうした時間感覚の違いを理解し、明確なコミュニケーションを心がけることが重要です。「soon」や「later」のような曖昧な表現を避け、具体的な期限を設定することで誤解を減らすことができます。

結論:状況に応じた判断と組織文化の重要性

「グレーゾーンは黙ってやった方がいい」という主張には、メリットとリスクの両面があります。イノベーションを促進し、スピード感を持って事業を進める上では有効な場合もありますが、組織の規律やコンプライアンス上の問題を引き起こすリスクも無視できません。

最終的には、以下のポイントを考慮した判断が必要でしょう:

  1. リスクの大きさ: 万が一失敗した場合の影響範囲と深刻度
  2. 組織文化: 自社の意思決定プロセスと許容度
  3. 信頼関係: 上司や同僚との関係性と相互理解の程度
  4. 透明性: 後から説明できる合理的な根拠があるか

企業が健全に成長するためには、「ハラスメントや長時間労働の問題をなくすためにも、労働者一人ひとりが『自分の権利として主張していい・すべきだ』という考えを企業文化として浸透させる」ような風通しの良い環境づくりも重要です。

最終的には、「誰かが『変えた』『変わった』ことを皆で認めて称賛する文化」を育むことで、イノベーションと規律のバランスのとれた組織を実現できるのではないでしょうか。


参考サイト

  1. グレース・ホッパー – Wikipedia
  2. 3Mの企業文化 – 3M Japan
  3. 不正のトライアングル理論 – ABITUS

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