起業家は何でもこなせるスーパーマンのように見えますが、その裏にある現実と組織成長の秘訣について徹底解説します。「社長一人の仕事を10人で分担」という感覚は、実は多くの成功企業が経験してきた成長プロセスの一部かもしれません。
起業家が持つ「両極」の特別な素養
起業家と呼ばれる人々には、一般社員とは異なる特別な素養があります。特に成功する起業家に共通しているのは、「両極」の強さです。
「『目の前のお客様をいかに満足させるか』という執念と、将来のビジョン・夢の強さ、その両極の強度が高い」という特徴があります。この相反する二つの要素を高いレベルで持ち合わせることが、起業家の大きな特徴です。
また、経営のボトルネックは突き詰めると「経営者自身のメンタルモデルの大きさ」だと言われています。起業家は大きな構想を描けば描くほど、打ち手の強度が高くなり、「たとえ人に批判されることであっても、やるべきことだったらやる」という力が生まれるのです。
さらに、成功する起業家には以下のようなマインドセットが共通しています:
- 失敗を恐れず、学びと捉える姿勢
- 柔軟な思考と自己改善への意欲
- 長期的なビジョンを揺るがず持ち続ける力
- 人脈を大切にする考え方
- 健康を優先し、自己管理を徹底する習慣
こうした特別な素養を持つ起業家だからこそ、一般の社員には難しい多様な役割をこなすことができるのです。
起業家が担う「マルチロール」の現実
起業家、特に創業初期の経営者は、文字通り「何でも屋」としての役割を担います。アメリカの事例では、小規模ビジネスのオーナーは次のような複数の役割(ハット)を被ると言われています:
- CEO(最高経営責任者):ビジョンを描き、従業員やパートナーを鼓舞する役割
- CFO(最高財務責任者):財務予測や資金繰りを管理する役割
- COO(最高執行責任者):日々の業務と品質を監督する役割
一人で複数の重要な役割を担うことは、起業家にとって日常的なことであり、この「マルチロール能力」こそが起業家の強みの一つです。しかし、組織が成長するにつれて、すべての役割を一人で担い続けることは難しくなります。
ある企業CEO(兼共同代表)はこう語っています:「一人のスーパーマンのおかげで勝てる事業もあると思いますが、僕らの勝ち筋はそうじゃない。チーム経営で勝つということを、とても重要視しています」
組織拡大と「人数の壁」の乗り越え方
組織が成長すると、「人数の壁」と呼ばれる課題に直面します。ベンチャー企業の成長過程では、「5~15人の壁」「30人の壁」「100人の壁」といった節目があると言われています。
「人数の壁」は早ければ5人くらいから10~15人くらいになるときに現れます。起業は1~3人で且つ友人が集まってスタートすることが多く、そこに新しいメンバーが加わると、考え方の違いが顕在化します。
30人前後になると、創業者は自分の声が隅々まで届かなくなったと感じ始め、全体会でのスピーチを長くしたり、同じ話を何度も繰り返したりする傾向が見られます。こうした状況では、役割分担と組織づくりが重要になってきます。
成功する組織づくりのための役割分担
組織拡大期には経営戦略の決定と、それに沿った組織づくりが重要です。事業を拡大する場合、必要な規模や期間はどれくらいか、または事業の柱をもう一つ作るのかなど、経営戦略によって必要な人材や人数が異なります。
創業メンバーの理想的な構成について、専門家は「フルコミットのコアメンバーとしては『代表1名』と『つくれる人2名』程度いれば十分」と指摘しています。特にSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)のような事業では、「つくれる人2名」「お客様と話せる人1名」の構成が良いとされています。
また、実際に成功したスタートアップがスケールする前の平均メンバー数は7.5人未満だったというデータもあります。これらの知見は、起業家一人の能力を複数人で分担することの重要性を裏付けています。
「役職」と「人員配置」で強い組織を作る
組織の成長に伴い、役職の決定と適切な人員配置が重要になります。役職や肩書などによって序列を設けることで、社内的にも対外的にも責任の所在が明確になり、組織的な課題も集約していくことができます。
中小企業白書2022によると、組織体制の見直しを行った企業は売上高が増加する傾向にあります。組織体制の見直しは組織の硬直化を防ぎ、人が異動することで事業にも柔軟性が生まれ、目まぐるしい環境変化に対応できると考えられています。
ある成功企業は20年ごとに事業を変化させ、組織改革で若い年代の役職者を増やすことで、事業と組織の新陳代謝を促しています。このように、意識的に組織改革を行うことも、強い組織を作るための一案といえるでしょう。
スーパーマンから「チーム経営」へのシフト
起業家は確かに特別な能力を持っていますが、持続的な成長を実現するためには、「スーパーマン一人」から「チーム経営」へのシフトが必要です。
ユーザベースの稲垣氏は、新規事業の成功について「やりたい人が好きにやる」ことが重要だと指摘しています。その際に、すべての社員が"船頭"になるわけではありませんが、事業トップと共に推進する組織のメンバー全員が、一つの理念や価値観といった軸を同じレベルの強度で共有することが大事だと述べています。
また、「事業ごとの責任者が、組織をつくり、事業に対するアプローチも全部自分で考えて、そこからPCDAサイクルを回してスケールさせていく。この一連のプロセスを、自分が最もオーナーシップが高い状態で、どこまで自由にやり切るか」ということが重要だと強調しています。
まとめ:「10人で社長一人分」は成長の証
「起業家の仕事を10人に分担してようやく同等になる」というのは、決して悪いことではなく、むしろ組織の成長と成熟の証といえるでしょう。優れた起業家は、自らの役割を適切に分担し、チームの力を最大化することで、より大きな成功を収めることができます。
組織が成長するにつれて、起業家自身も「何でも屋」から、より戦略的な役割へとシフトしていく必要があります。それは単に仕事を委譲するだけでなく、各メンバーがオーナーシップを持って取り組める環境を整えることでもあります。
最終的に、起業家のスーパーマン的な能力を組織の力に変換できるかどうかが、企業の持続的成長を左右する重要な要素となるのです。
起業家と一般社員の違いは能力の差ではなく、役割の違いと捉え、お互いが最大限の力を発揮できる組織づくりこそが、これからのビジネスリーダーに求められる視点ではないでしょうか。
参考サイト:
dimension-note「成功する起業家が強く持つ「両極」の素養」
https://dimension-note.jp/business/entrepreneurship/
りそなBiz Action「強い組織を作るための役職と人員配置」
https://resona-biz.jp/action/column/organization/20220805_1.html
FASTGROW「スタートアップ創業メンバーの理想的な役割分担」
https://www.fastgrow.jp/articles/startup-founders-roles

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