「このまま今の会社にいて大丈夫だろうか…」「営業以外のスキルがなくて将来が不安…」「同期が次々と転職や昇進をしていくのを見ると焦りを感じる…」
こんな悩みを抱えていませんか?大手企業に就職して10年近く経つと、多くの人がキャリアの岐路に立たされます。転職すべきか、このまま今の会社で頑張るべきか。安定を求める気持ちと、より良いキャリアを求める気持ちの間で揺れ動くことも多いでしょう。
実は、すぐに転職しなくても、今の会社にいながら自分の市場価値を高め、将来の選択肢を増やすことは十分可能なのです。本記事では、田中研之輔氏の著書「今すぐ転職を考えていない人のためのキャリア戦略」をもとに、転職せずに今の会社で成長し、未来の選択肢を広げる具体的な方法をご紹介します。
なぜ今「キャリア戦略」が必要なのか?
日本の雇用環境は大きく変わりつつあります。かつての終身雇用は崩れ、働き方の選択肢も多様化しています。2019年には、トヨタ自動車の豊田章男社長と経団連会長の中西宏明氏が「終身雇用制度の限界」について言及したことでも話題になりました。
このような環境変化の中、田中研之輔氏は現代を以下のように時代区分しています:
- 昭和:「組織の時代」(組織への忠誠心重視)
- 平成:「個人の時代」(働き方の多様化)
- 令和:「関係性の時代」(組織と個人の関係性再構築)
特に注目すべきは、現代が「関係性の時代」と位置づけられている点です。これは、単に組織から独立するのではなく、組織と個人が新たな関係性を築くことの重要性を示唆しています。
私たちはもはや「会社任せのキャリア」では生き残れません。かといって「すぐに転職」が答えでもありません。必要なのは、現在の環境を最大限活用しながら、自分の「キャリア資本」を戦略的に蓄積していく視点なのです。
「キャリア資本」とは何か?あなたの本当の市場価値を知る
「キャリア資本」とは、田中氏が提唱する概念で、単なる役職や肩書きではなく、第三者の視点から見た個人の市場価値を示すものです。キャリア資本は主に以下の3つから構成されます:
- ビジネス資本:スキル、語学力、資格、職歴など
- 社会関係資本:人脈やネットワーク
- 経済資本:金銭的な資産
多くの人は「働く=お金をもらう」と考えがちですが、実はビジネス資本と社会関係資本をしっかり育てなければ、経済資本には転換できません。
重要なのは、日々の業務に対する意識を根本的に変えることです。単に与えられたタスクを処理する(「こなす」)のではなく、その業務を通じて自身のキャリア資本を意識的に積み上げる(「ためる」)という視点への転換が求められます。
たとえば、同じ顧客への営業活動でも:
- 「こなす」思考:契約を取れればそれでOK
- 「ためる」思考:この顧客との関係構築を通じて業界知識を深め、交渉力を磨き、人脈を広げる機会と捉える
このように日々の仕事を「キャリア資本を蓄積する機会」と捉え直すことで、同じ業務でも得られる価値が大きく変わってきます。
「思考時間」と「作業時間」の区別がキャリアを変える
現代のビジネスパーソンの多くは、「作業」に追われるあまり、本来の価値を生み出す「思考」の時間を確保できていません。田中氏は、「思考時間」と「作業時間」を区別することの重要性を説いています。
「作業時間」とは何か?
- メール処理
- 資料作成の繰り返し作業
- 会議や報告書作成
- 日常的な調整業務
「思考時間」とは何か?
- 新しいアイデアを生み出す時間
- 問題解決のための深い分析を行う時間
- 戦略を考える時間
- 創造的な企画を練る時間
AI時代においては、ルーティン作業の多くは自動化される可能性が高く、「思考」こそが人間の付加価値になります。思考時間を増やすための具体的な実践法としては:
- タイムブロッキング:集中時間を確保するためにカレンダーにあらかじめ時間枠を設定
- Deep Workのルーティン化:毎日決まった時間・場所・手順で深い仕事に取り組む習慣を作る
- 集中力を高めるトレーニング:運動や瞑想を取り入れる
- デジタルデトックス:特定の時間はメールやSNSから離れる
- 最重要タスクの優先:一日の最初に最も重要な思考タスクに取り組む
営業職の方なら、例えば朝の2時間を「新規開拓戦略の立案」や「顧客分析」などの思考タスクに充て、午後からメールや定型業務を行うといった工夫が可能です。
「稼ぎ抜く生き方」への転換で自律性を手に入れる
田中氏が提唱する「稼ぎ抜く生き方」は、単にフリーランスになったり、お金持ちになったりすることを意味するわけではありません。それは、「自分の価値観に基づいた生き方を主体的に選ぶ」という意味での自律性を手に入れることです。
「稼ぎ抜く生き方」の本質は以下の要素にあります:
- 主体性を持つこと:「会社がこう言っているから」ではなく、自分の判断で行動する
- プロセスを重視すること:結果だけでなく、価値創造のプロセスそのものに喜びを見出す
- 長期的な視点を持つこと:短期的な成果だけでなく、人生全体を俯瞰して考える
具体的な実践方法としては:
- 副業を始める:本業の知識やスキルを活かした小さな副業から挑戦
- 社内での新たな役割獲得:プロジェクトリーダーやメンター役など新たな挑戦を自ら求める
- 専門性の深化:業界や職種の専門性を高める学習に投資する
- 研究会や勉強会への参加:社外の知見に触れる機会を意識的に作る
注目すべきは、これらの活動は必ずしも「転職」を前提としていない点です。今の会社にいながらも、自分のキャリア資本を高め、会社に依存しない「稼ぐ力」を養うことができるのです。
「組織依存」から「自律型キャリア」への移行法
多くの大手企業社員が陥りがちなのが「組織依存」の罠です。「この会社にいさえすれば安泰」という考え方は、すでに過去のものになりつつあります。しかし、だからといって会社を辞める必要はありません。
田中氏は「組織内キャリア」から「自律型キャリア」への移行を提案しています。その具体的なステップは:
- 自己認識を深める:自分の強み・弱み、価値観、興味関心を改めて掘り下げる
- 市場価値を客観視する:社内評価だけでなく、社外でも通用するスキルは何かを考える
- 組織を「活用」する視点を持つ:会社を「敵」ではなく、自分の成長のための「プラットフォーム」と捉える
- 社内外のネットワークを構築する:同じ業界・異業種含め、人的ネットワークを広げる
営業職の方なら、すでに持っている顧客折衝スキルや提案力などを「汎用的なスキル」として再認識し、それを社内の別プロジェクトや副業などで活用する視点を持つことが重要です。
さらに、田中氏が提唱する「キャリア資本を蓄積する6つのモデル」も参考になります:
- イントラプレナー型:社内で新規事業などに挑戦する
- トランスファー型:獲得したスキルを活かして転職する
- ハイブリッド型:副業などを通じて複数の資本を蓄積する
- プロフェッショナル型:特定分野の専門性を徹底的に高める
- セルフエンプロイ型:蓄積した資本を元に独立する
- コネクター型:人と人をつなぐ役割を担う
現在の状況に応じて、最適なモデルを選択し実践することができます。
ハイブリッドワーク時代のキャリア戦略実践法
コロナ禍を経て広がったリモートワークやハイブリッドワークは、キャリア戦略の実践にも新たな可能性をもたらしました。働く場所と時間の自由度が増したことで、キャリア資本蓄積のための時間を確保しやすくなっています。
ハイブリッドワークを活用したキャリア戦略の実践法には:
- 通勤時間の有効活用:リモートワークで削減された通勤時間を学習や思考の時間に
- 場所の使い分け:創造的な仕事は集中できる自宅で、協働が必要な仕事はオフィスで
- オンラインでの影響力構築:社内外のオンラインコミュニティで発信力を高める
- 時間のブロック管理:オンとオフを明確に分け、メリハリある時間活用を実現
特に営業職の方は、顧客訪問と内勤のバランスが変化する中で、より戦略的な時間活用が可能になっています。顧客との対面時間は質の高い関係構築に集中し、分析や企画などの思考作業はリモートで集中して行うといった使い分けが効果的です。
実践!今日から始めるキャリア戦略3つのステップ
ここまで理論的な部分を見てきましたが、最後に具体的な実践方法をご紹介します。
STEP1:自己分析と棚卸し
まずは、自分自身のキャリア資本を客観的に評価するところから始めましょう。
- 業務経験から得たスキルは何か?
- 強みと弱みは何か?
- 市場価値の高いスキルは何か?
営業職であれば、「提案力」「コミュニケーション能力」「顧客理解力」「交渉力」などが強みとして挙げられるかもしれません。
具体的なワークとしては:
- 過去3年間の主な業務とそこで得たスキルをリストアップ
- 上司や同僚、顧客からもらった評価やフィードバックを整理
- Linkedinなどで同業他社の同じ職種の人のスキルセットを参考にする
STEP2:キャリア資本蓄積の戦略立案
自己分析の結果を踏まえ、どのようにキャリア資本を蓄積していくかの計画を立てます。
- 次の1年で強化すべきスキルは何か?
- そのために必要な経験やトレーニングは?
- 社内のどんな機会を活用できるか?
例えば「デジタルマーケティングスキルを高めたい」という目標があれば:
- 社内のデジタルマーケティングプロジェクトに参加を志願する
- オンライン講座で基礎知識を習得する
- 小規模な副業で実践経験を積む
といった具体的な行動計画を立てます。
STEP3:日常の習慣化と実践
最後に、理論と計画を日々の行動に落とし込みます。
- 毎朝30分の学習時間を確保する
- 週に1回、キャリアを振り返る時間を設ける
- 月に1回は社外の勉強会や交流会に参加する
特に重要なのは、「思考時間」を意識的に確保すること。毎日の業務に追われるだけでなく、自分のキャリアについて考える時間を定期的に設けることが、長期的な成長につながります。
日々の小さな実践の積み重ねが、やがて大きなキャリア資本となって蓄積されていくのです。
まとめ:組織に依存せず、かつ現在の環境を最大活用するキャリア戦略
本記事では、田中研之輔氏の「今すぐ転職を考えていない人のためのキャリア戦略」の核心を紐解きながら、具体的な実践方法をご紹介しました。
重要なポイントをおさらいすると:
- 現代は「関係性の時代」であり、組織と個人の新たな関係構築が求められている
- キャリア資本(ビジネス資本・社会関係資本・経済資本)を意識的に蓄積することが重要
- 日々の業務を「こなす」のではなく「ためる」という視点の転換
- 「作業時間」を減らし「思考時間」を増やす工夫
- 組織依存から自律型キャリアへの段階的な移行
これらの考え方は、すぐに転職しなくても、今の環境で最大限の成長を遂げるための羅針盤となります。
住宅ローンがあるから、家族がいるから、などの理由で安定を求める気持ちは当然です。しかし、その安定を本当の意味で手に入れるには、皮肉にも「会社だけに依存しない」キャリア戦略が必要なのです。
明日から何か一つでも、この記事で紹介した実践方法を取り入れてみてください。小さな一歩の積み重ねが、あなたの未来を大きく変えていくはずです。


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