結核の死亡率:世界と日本の現状

歴史


結核は古くから「労咳(ろうがい)」とも呼ばれ、かつては「不治の病」「亡国の病」として恐れられていました。現代の医療技術の進歩により治療可能な疾患となりましたが、今なお世界的に見れば深刻な健康問題であり続けています。この報告書では、結核の死亡率について世界と日本の現状を分析します。

結核の現状と世界的位置づけ

結核は現在、世界の感染症による死因のトップに位置しています。2023年には、COVID-19を抜いて感染症による死因の第1位となりました。2023年の世界データによれば、約1,080万人が新たに結核を発症し、約125万人が結核により死亡したと推定されています。これは単一の感染症としては非常に高い死亡者数です。

日本においても結核は「過去の病気」ではなく、毎年約10,000人が新たに発症し、1,500人以上が結核で命を落としています。日本の結核対策は進んでいるものの、高齢者を中心に依然として発生が続いており、結核への警戒を緩めることはできません。

世界の結核死亡率

現在の死亡率

世界全体の結核による死亡率は、2023年時点で人口10万人あたり約13-15.5人と報告されています。これは地域によって大きな差があり、アフリカや南アジアの一部の国々では特に高い死亡率を示しています。

WHOの報告によれば、2022年の地域別結核死亡者数は、南東アジア地域が606,000人と最も多く、次いでアフリカ地域が310,000人となっています。人口当たりの死亡率で見ると、中央アフリカ共和国(人口10万人あたり91人)、ミャンマー(同80人)、マーシャル諸島(同76人)などが特に高い死亡率を記録しています。

死亡率の推移

結核による死亡率は世界的に見れば緩やかに減少傾向にあります。2015年から2023年の間に、世界の結核死亡率は人口10万人あたり17人から13人へと約23%減少しました。しかし、この減少ペースでは、WHOが「結核終息戦略」で掲げる「2015年から2025年までに結核死亡率を75%削減する」という目標達成は難しい状況です。

また、COVID-19パンデミックの影響により、2020年に結核の死亡率は一時的に悪化しました。パンデミック以前は順調に減少していた結核の指標が、医療資源の転用や人々の受診控えなどにより悪化したためです。

日本の結核死亡率

現在の状況

令和3年(2021年)の日本における結核死亡者数は1,845人で、人口10万人あたりの死亡率は1.5と報告されています。これは欧米諸国と比較すると依然として高い水準ですが、かつての「死亡原因第1位」だった時代と比べると大幅に改善しています。

地域差

日本国内での結核死亡率には地域差があります。令和3年のデータによれば、都道府県別の結核死亡率が最も高かったのは徳島県(4.8)で、次いで長崎県(2.3)、富山県(2.2)、大阪府(2.2)などとなっています。一方、最も低かったのは山梨県(0.5)でした。政令指定都市では大阪市(3.2)、神戸市(2.6)、北九州市(2.5)で高い死亡率が見られました。

結核患者の治療成績と死亡率

2022年に新規登録された結核患者10,216人の2023年末時点での治療成績によれば、死亡率は27.0%となっています。これは治療成功率(64.9%)に次ぐ割合であり、日本の結核患者の約3割が死亡していることを示しています。ただし、この高い死亡率は、日本の結核患者の約30%が80歳以上の高齢者であることが大きな要因です。実際、59歳以下の患者の治療成功率は82.1-89.9%と高くなっています。

多剤耐性結核と死亡率

多剤耐性結核(MDR-TB)は、主要な抗結核薬であるイソニアジドとリファンピシンの両方に耐性を持つ結核菌による感染症で、治療が困難な公衆衛生上の課題となっています。

日本での多剤耐性結核の致死率は16%と報告されており、世界全体では約20%と推定されています。WHOの世界全体のデータでは、2021年の多剤耐性結核の発生件数が約45万件、死亡者数は約19,100人と推定されています。

特にHIV患者が多剤耐性結核に感染した場合は、国立医療研究科学院の報告によると、診断後2~3ヶ月の致死率は約80%にのぼるとされています。これはHIVによる免疫力低下が結核の進行を早めるためと考えられています。

高リスク集団と死亡要因

結核は全ての年齢層に影響しますが、特に以下の集団で発症リスクや死亡リスクが高まります:

  1. 高齢者: 日本では結核患者の約6割が70歳以上の高齢者です。高齢による免疫力の低下が発症リスクを高めています。
  2. HIV感染者: HIV感染者は結核を発症するリスクが20~30倍高くなります。世界的には結核死亡者のうち約16万人がHIV感染者です。
  3. 免疫力が低下している人: 栄養失調、糖尿病、喫煙者などは結核発症リスクが高まります。
  4. 小児: 2022年には世界で約214,000人の子どもが結核で死亡しました。小児結核は診断が難しく、適切な治療が遅れがちという問題があります。

結核対策と死亡率低減の取り組み

世界的な結核対策として、WHOは「結核終息戦略」(End TB Strategy)を推進しています。この戦略では2035年までに「世界の結核を事実上終息させる」(罹患率を人口10万対10以下に)ことを目標としています。

結核は早期発見・早期治療により治癒可能な疾患です。WHOが推奨する直接服薬確認療法(DOTS)や「ストップ結核戦略」の導入によって、2000年から2016年までに推定5,300万人の命が救われたと言われています。

しかし、多剤耐性結核の増加や資金不足などの課題が残されており、新しい結核の診断薬、治療薬、ワクチンの開発が必要とされています。

結論

結核は治療可能な疾患となったものの、世界的には依然として感染症による死因の第1位であり、年間125万人以上の命を奪っています。日本においても年間1,500人以上が結核で亡くなっており、特に高齢者における死亡率が高くなっています。

結核の死亡率を下げるためには、早期発見・早期治療が鍵となります。特に高リスク集団に対する検診強化や啓発活動の継続、そして多剤耐性結核への対策強化が重要です。また、世界的な協力のもと、適切な資金配分と新たな治療法・診断法の開発を進めることで、WHOが掲げる「結核終息」の目標に近づくことができるでしょう。

日本を含む先進国では結核は「過去の病気」という認識が広がりつつありますが、油断は禁物です。結核の脅威を正しく理解し、予防と早期発見・早期治療の重要性を社会全体で共有していくことが求められています。

参考サイト

政府広報オンライン – 「結核」に注意!古くて新しい感染症
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201509/3.html

WHO Global TB Report 2024
https://www.who.int/teams/global-programme-on-tuberculosis-and-lung-health/tb-reports/global-tuberculosis-report-2023/tb-disease-burden/1-2-tb-mortality

ストップ結核パートナーシップ日本 – 世界の結核
https://www.stoptb.jp/about/world.html

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