労咳(ろうがい)と喀血の関係 – 結核が引き起こす呼吸器症状の歴史と現代

歴史


近年ではあまり耳にすることの少なくなった「労咳(ろうがい)」という言葉。かつて日本では恐れられていたこの病について、特に喀血という症状との関係から詳しく解説します。労咳とは何か、なぜ怖れられていたのか、そして現代医学ではどのように対処されているのかを見ていきましょう。

労咳(ろうがい)とは – 結核の古い呼び名

労咳とは、現代医学でいう「肺結核」の古い呼び名です。日本では江戸時代から明治初期にかけて一般的に使われていました。「労」という漢字には「疲労困憊したもの」「慢性症にして身体の衰弱を招く病症」という意味があり、結核の特徴である長期的な衰弱状態を表しています。

結核は日本でも古くから知られた病気で、江戸時代には「労瘵(ろうさい)」「労咳(ろうがい)」などと呼ばれ、身近な病気でした。しかし結核が猛威をふるうのは明治後半から大正・昭和初期、つまり日本の産業革命期と一致します。

ヨーロッパでは「白いペスト」の名で恐れられたこの病気は、平安時代の『枕草子』や『源氏物語』にもその描写があるほど古くから認識されていましたが、治療薬は20世紀なかばにならないと発見されませんでした。

労咳の症状と喀血の関係

肺結核の主な症状

肺結核の症状には次のようなものがあります:

  • 咳(患者の78%に見られる)
  • 体重減少(74%)
  • 倦怠感(68%)
  • 発熱(60%)
  • 盗汗(55%)
  • 血痰(28%)

特に注目すべきは「血痰」や「喀血」という症状です。結核が進行すると空洞病変や気管支拡張が起こり、血痰や喀血を引き起こすことがあります。

喀血とは何か

喀血とは、咳とともに気道(気管・気管支・肺)から血液が出ることを指します。少量の血が痰に混じる程度の血痰から、コップ数杯の大量喀血まで様々です。

喀血と似た症状に「吐血」がありますが、これは異なります。吐血は消化管からの出血で、嘔吐とともに血液が出てくるものです。

喀血と吐血の見分け方

特徴 喀血 吐血
暗赤色 鮮赤色
性状 泡沫状、凝固しない 塊状、凝固する
混在物 喀痰、膿性痰 食物残渣
持続 しばらく続く 短時間で反復する
pH アルカリ性 酸性
他の症状 胸部所見、X線異常 腹部症状

労咳(結核)による喀血の特徴

結核による喀血は、結核菌が肺に作った病巣(特に空洞)から出血することで起こります。結核の活動性病変だけでなく、実は陳旧性(治癒したと思われる古い)結核病変からも喀血をきたすことがあり、そのような症例は少なくないことが報告されています。

一例として、「非典型的画像所見にもかかわらず喀血をきたした陳旧性肺結核の1例」では、内腔がほぼ石灰化陰影で占められた薄壁空洞病変から喀血したケースが報告されています。

喀血の診断と治療

喀血の診断

喀血を診断するためには、以下の検査が行われます:

  1. 胸部X線検査、CT検査
  2. 血液検査
  3. 喀痰検査(抗酸菌塗抹・培養・核酸増幅法等)
  4. 気管支鏡検査

特に結核を疑う場合は、医療従事者はN95マスクを着用し、患者にはサージカルマスクを装着させます。また、陰圧の個室で隔離するのが望ましいとされています。

喀血の治療

喀血の治療は原因となる疾患の治療と止血が原則です。

  1. 少量の血痰(おちょこ1杯未満;20cc未満)
    止血剤の内服で外来で様子を見ることが多い
  2. 中等量喀血(おちょこ1杯以上;20~200cc未満)
    全身状態に応じて入院を検討
  3. 大量喀血(コップ1杯以上;200cc以上)
    基本的に緊急入院が必要となることが多い

止血剤としては、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム水和物(アドナ)+トラネキサム酸(トランサミン)の点滴投与などが一般的に行われます。

大量喀血で止血困難な場合は、「気管支動脈塞栓術(BAE)」という、カテーテルで血管を詰める方法も行われます。これはRemyらによって報告されて以来、その有効性から重要な止血手段として広く行われています。

例えば、ある症例報告では、気管支結核症による大量喀血に対して胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行し有効な止血を得て救命に至った例が報告されています。

現代における結核の治療と予防

現代の結核治療は、以下の抗結核薬を用いた多剤併用療法が標準となっています:

  • イソニアジド
  • リファンピシン
  • ピラジナミド
  • エタンブトール
  • ストレプトマイシン

治療期間は6ヶ月から9ヶ月に及び、症状が無くなっても自己判断で薬をやめると薬剤耐性結核となる可能性があります。

予防には、BCGワクチン接種が有効です。BCGは結核の重症化を防ぐワクチンで、特に子供の結核予防に有効とされています。

まとめ – 労咳と喀血の理解の重要性

労咳(肺結核)は、かつて日本の「国民病」とも呼ばれた恐ろしい感染症でした。その典型的な症状の一つである喀血は、特に大量の場合は生命を脅かす緊急事態となります。

現代では抗結核薬の発達により結核は治療可能な疾患となりましたが、今でも日本では年間約1万7千人が新たに発症しています。特に高齢者では昔結核に感染したものの発症せず、高齢になってから発病するケースも少なくありません。

喀血を伴う呼吸器症状があれば、結核も含めた適切な診断と治療が重要です。2週間以上咳が続く場合や血痰がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

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