障害年金の申請をしても「不支給」と判定されるケースが急増しています。2024年度には前年度の2倍以上となる約3万人が不支給と判定され、多くの障害者の生活に大きな影響を与えていることが明らかになりました。この記事では、不支給率急増の背景や影響、そして申請者が知っておくべき情報を詳しく解説します。
障害年金不支給の急増と現状
2024年度に障害年金を申請して不支給と判定された人が、前年度の2倍以上に急増し、約3万人に上ることが明らかになりました。この数字は日本年金機構が統計を取り始めた2019年度以降で最多となっています。審査された人の約6人に1人が不支給と判定された計算で、その割合も前年度の約2倍に増え、過去最大となる見通しです。
特に精神・発達障害の分野では不支給の増加が顕著です。共同通信が実施したサンプル調査によると、精神・発達障害では2024年の不支給割合が2023年比で2倍に増加し、全ての障害種別でも1.6倍に増えています。
この急増は多くの申請者に困惑を与えており、社会保険労務士からは「明らかに判定が厳しくなった。以前なら受け取れたはずの人に支給されなくなり、生活に影響が出ている」との声が上がっています。
実際の影響と申請者の声
「この状態でも、もらえないんですか?」-これが最近、相談窓口に寄せられる最も多い声となっています。重度のうつ状態で会話も困難な女性が2級相当の診断書を添えて申請したケースでも、「抗うつ薬の処方がないこと」を理由に不該当とされるなど、申請者の実態が十分に考慮されていないケースが報告されています。
また、「食事が摂れるようになった」との記述が「支障なし」と評価されたケースもありますが、実際には「最悪期は3日で1食しか摂れなかった状態から、やっと1日1食に戻れた」という文脈が無視されてしまうケースも起きています。
不支給急増の背景と要因
人事異動と運用の変化
判定基準自体に変更はないとされる中、不支給急増の要因について年金機構の複数の関係者は、2023年10月の人事異動で就任した障害年金センター長が書類の要件を厳格化したことを指摘しています。同センター職員によると、センター長の就任後、職員が判定医に低い等級や「等級非該当」と提案するケースが増えたとのことです。
一方で、センター長は取材に対して「審査を厳しくするように言ったことはない」と話しており、表向きには基準変更を否定しています。日本年金機構も「審査方法などは変更しておらず、基準に基づき適正に判定している」と回答しています。
審査の不透明性
障害年金の審査では、全国に約140人の判定医が在籍していますが、審査を担当する医師がどの分野を専門としているのか、発達障害や知的障害に詳しい医師かどうかなど、基本的な情報が非公開となっています。このような「見えなさ」が、審査結果に対する不信感を生み出す一因となっています。
障害年金制度の基本と重要性
障害年金の種類と金額
障害年金には、主に障害基礎年金と障害厚生年金があります。障害基礎年金の2024年度の年金額は、1級が年額1,020,000円(月額85,000円)、2級が年額816,000円(月額68,000円)となっており、子の加算がある場合はさらに増額されます。
障害厚生年金は、厚生年金保険加入中に初診日がある人が受給でき、障害の程度によって1級から3級、さらに障害手当金の区分があります。金額は加入期間や平均標準報酬額によって個人差があります。
障害年金の支給率の実態
2023年度の障害年金業務統計によると、新規請求(障害基礎・厚生合計)142,209件のうち、非該当は11,947件(8.4%)であり、支給率は91.6%となっていました。しかし、2024年度にはこの不支給率が大幅に上昇し、約16~17%に達したことになります。
申請者が取るべき対策
診断書作成の重要性
精神疾患の障害年金審査では、「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」に基づいて点数が算出され、その点数が等級判定の重要な指標となります。診断書の内容が審査に大きく影響するため、医師との綿密なコミュニケーションが重要です。
申請後の対応強化
2024年以降、申請後にカルテ開示や診断書での疑義照会(医師の追加の意見書)、精神障害では「日常生活及び就労に関する状況について(照会)」といった返戻が急増しています。「本当にその状態なのか?」という裏取りが厳しくなっており、ポジティブな記述だけが引き出されて判定に使われるケースもあるため、返戻への対応も慎重に行う必要があります。
今後の展望と課題
制度の信頼性と透明性
障害年金制度の判定において属人的な要素で判断が左右される余地があることが明らかになり、制度の信頼性が揺らいでいます。社会保険労務士や障害者団体からは「少なくとも、判定医の専門分野や審査経験年数だけでも公表してほしい」という声が出ていますが、現時点では実現していません。
今後の統計公表に注目
障害年金の正式な統計は毎年9月に公表されています。2024年度の正式な統計は2025年9月に発表される予定で、非該当になった割合がどのように変化しているか、注視する必要があります。
障害年金申請の現状と対応策
障害年金の申請において、特に2024年以降は審査が厳格化している可能性があります。申請を考えている方は、より丁寧な準備と、必要に応じて社会保険労務士などの専門家のサポートを検討することが重要でしょう。
不支給判定に不服がある場合は、再審査請求や審査請求などの手続きを検討することも選択肢の一つです。ただし、手続きには期限があるため、判定結果を受け取ったら速やかに対応を検討する必要があります。
適切な情報収集の重要性
障害年金の申請や不服申立てを検討する際は、最新の情報を収集することが重要です。厚生労働省や日本年金機構のウェブサイト、障害年金に詳しい社会保険労務士のブログなどを参考にすると良いでしょう。
まとめ
2024年度の障害年金の不支給率急増は、多くの障害者の生活に影響を与える深刻な問題です。人事異動による運用の変化が背景にあるとされていますが、公式には基準変更は否定されています。申請者は綿密な準備と適切な対応を心がけることが重要です。
今後、制度の透明性向上や、属人的判断に依存しない仕組みづくりが求められるでしょう。障害を持つ人々が適切な支援を受けられる社会の実現に向けて、制度の改善が必要です。
参考情報
- Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/ebbadf68853fcdbdf85fa50f1332f35834fa1dbc
- 沖縄タイムス https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1573835
- 長谷社労士事務所 http://www.hase-sr.jp/17279140905308

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