「労咳(ろうがい)」とは?かつての国民病が現代に残す影響

歴史


昔の時代劇などで耳にする「労咳」という言葉。現代では「結核」と呼ばれるこの感染症は、かつて日本中で猛威を振るった恐ろしい病気でした。しかし多くの人は「結核は過去の病気」と考えがちです。実は現在も静かに私たちの社会に存在し続けているのが労咳、すなわち結核なのです。今回は「労咳」の歴史から現在の状況まで、詳しくご紹介します。

「労咳」の歴史と意味

「労咳」という名前の由来

「労咳(ろうがい)」という名称は、日本では江戸時代から明治初期まで肺結核を指す言葉として使われていました。「労」は疲労困憊した状態や慢性的に身体の衰弱を招く病症を表し、「労咳」は「疲労によって起こる咳を伴う衰弱」という意味があります。

英語では消耗を意味する「consumption」、漢方医学では「消耗症」と呼ばれ、どれも患者が次第に衰弱していく症状を捉えた名称でした。ヨーロッパでは「白いペスト」という名前で恐れられていました。

結核の記述は古くから見られ、平安時代の『枕草子』や『源氏物語』にもその描写があります。日本の歴史において、高杉晋作、樋口一葉、沖田総司など数多くの歴史上の人物が労咳に苦しめられました。

現代における結核(労咳)の実態

「過去の病気」ではない現実

結核は「昔の病気」と思われがちですが、実は現在も日本国内で年間約1万人が発症している身近な感染症です。2023年の新登録結核患者数は10,096人で、前年より139人(1.4%)減少しています。

2023年の結核罹患率(人口10万対)は8.1となり、2021年から結核低蔓延国の水準(罹患率10.0以下)を達成・維持しています。これは日本の結核対策が一定の成果を上げている証拠ですが、まだ完全に撲滅されたわけではありません。

世界と日本の結核事情

世界に目を向けると、状況はさらに深刻です。2023年に世界では新たに約820万人が結核と診断され、これはWHOが1995年に結核の世界的な調査を開始して以来、最も多い数字です。さらに、2023年には結核はCOVID-19を抜いて、感染症による死因のトップとなりました。

日本では都道府県別の結核罹患率に差があり、2023年は大阪府が最も高く13.1、最も低い岩手県は3.6と、約3.6倍の差があります。大都市圏で高い傾向があるのは、人口密度の高さが関係していると考えられます。

現代の結核患者の特徴

高齢化する結核患者

現代日本の結核患者の特徴として、高齢者の割合が非常に高いことが挙げられます。2023年の新登録結核患者のうち、65歳以上は6,740人で全体の66.8%を占めています。さらに80歳以上は4,329人で全体の42.9%にのぼります。

これは、結核が流行していた時代に感染した人が発症しないまま長い潜伏期間を経て、老化による免疫力の低下や他の疾病の影響により結核菌が活性化して発症したためと考えられています。

増加する外国出生患者

もう一つの特徴は、外国出生の結核患者の増加です。2023年の外国出生新登録結核患者数は1,619人で、前年の1,214人から405人増加しました。新登録結核患者総数のうち外国出生患者が占める割合は16.0%ですが、20歳代では84.8%と非常に高い割合になっています。

出生国別ではフィリピンが最多で、ベトナム、インドネシア、ネパール、ミャンマー、中国と続いています。

現代の結核治療と予防

効果的な薬物療法

かつて「不治の病」とも呼ばれた結核ですが、現在は効果的な治療法が確立されています。標準的な治療は6カ月から9カ月に及ぶ抗結核薬治療で、イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール、ストレプトマイシンなどを併用する4剤併用療法または3剤併用療法が行われます。

ただし、治療中に自己判断で薬の服用をやめてしまうと、薬剤耐性結核となり薬が効かなくなる可能性があるため注意が必要です。2023年の新登録培養陽性肺結核患者のうち、多剤耐性結核(MDR)は0.8%存在しています。

予防と早期発見の重要性

結核の予防にはBCGワクチンが有効で、特に子どもの結核予防に効果を発揮します。日本ではBCGの定期接種が行われていることで、予防接種を受けている年代では発症数が抑えられています。

また、初期の結核症状は風邪とよく似ていることから、2週間以上咳や痰、微熱が続く場合には医療機関を受診することが重要です。健康診断などでの胸部レントゲン検査も早期発見に役立ちます。

結核対策の今後と展望

結核の罹患率は年々減少しているものの、撲滅までには至っていません。特に高齢者の発症と外国出生患者の増加は今後も課題となるでしょう。また、2023年の潜在性結核感染症要治療者数は5,033人で、これは将来的に発症する可能性のある人々です。

世界的には結核対策の進展が国によってまちまちであること、深刻な資金不足などの課題が残されており、新しい結核の診断薬、薬、ワクチンの開発を妨げていることが指摘されています。

「労咳」という言葉は過去のものになりましたが、結核という疾患は現代にも存在し続けています。正しい知識と適切な予防、早期発見・早期治療によって、この古くから人類を苦しめてきた感染症との闘いを続けていくことが重要です。

参考情報

コトバンク「労咳(ロウガイ)とは? 意味や使い方」

労咳-662499

国立国会図書館「虎狼痢/コレラ 労咳/肺結核」
https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/11/2.html

医療法人慶信會 石塚醫院「結核について」
https://www.ishizuka-clinic.or.jp/mamechishiki/218/

注意

・Amazonのアソシエイトとして、双子のドラ猫は適格販売により収入を得ています。
・この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的・法律的なアドバイス等の専門情報を含みません。何らかの懸念がある場合は、必ず医師、弁護士等の専門家に相談してください。
・記事の内容は最新の情報に基づいていますが、専門的な知見は常に更新されているため、最新の情報を確認することをお勧めします。
・記事内に個人名が含まれる場合、基本的に、その個人名は仮の名前であり実名ではありません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました