高速道路や一般道での逆走は重大事故に繋がりやすい危険な行為です。国土交通省によると、高速道路の逆走事故は、高速道路における事故全体に比べて死傷事故となる割合が約5倍、死亡事故となる割合が約40倍にも達します。では、なぜこのような危険な逆走が発生するのでしょうか。本稿では逆走が起こる主な原因と、その対策について詳しく解説します。
高速道路における逆走の主な原因
高速道路での逆走は特に深刻な問題となっています。全国の各高速道路株式会社の調査によると、高速道路の逆走の約7割が65歳以上の高齢者によるものであり、現在でも約2日に1回の割合で発生していると報告されています。高速道路での逆走が起こる理由には、以下のような要因があります。
判断力の低下によるパニック反応
高速道路の逆走の約6割がインターチェンジやジャンクション付近で発生しています。その主な要因は「行き先の間違いに気付いて戻ろうとした逆走」が約5割を占めています。加齢により判断力が低下すると、想定外の事態が発生した際にパニックになりやすくなります。
例えば、降りるインターチェンジを通り過ぎてしまったり、分岐を間違えたりした場合、冷静な判断ができず、すぐに修正しようとしてバックやUターンによる逆走に及んでしまうのです。特に高齢ドライバーの場合、このような状況でのパニック反応が顕著に見られます。
認知機能の衰えによる状況認識の欠如
国土交通省のデータによれば、高速道路を逆走したドライバーのうち、「高速道路の走行及び逆走の認識がなく認知症の疑い等がある例」が16%、「逆走の認識がなく認知症の疑いがある例」が4%となっています。つまり、逆走したドライバーの5人に1人は認知機能の低下が逆走の原因となっていることになります。
この場合、そもそも入ってはいけない流出路から入ってしまい、最後まで逆走の認識がないという危険な状態に陥ります。高速道路を逆走しても最後まで逆走の認識がなかったドライバーの約9割が65歳以上の高齢者であったという調査結果は、加齢による認知機能の衰えが逆走に深刻な影響を与えていることを示しています。
進行ルートを誤る運転ミス
過失による逆走の中で最も多いのが、進行ルートを誤って逆走するパターンです。例えば、一般道からICの料金所に入る際、誤って出口方向から侵入してしまうケースです。周囲には標識などがあるため本来は間違えるはずがないのですが、他のことに気を取られていると、気づかないうちに出口から侵入してしまうことがあります。
また、高速道路の料金所に入る際、誤って料金所出口に進入してしまうケースも少なくありません。同乗者との会話などに気を取られ、標識等を見落として逆走してしまうことがあるようです。
一般道における逆走の発生原因
逆走は高速道路だけでなく、一般道においても度々発生しています。一般道での逆走には以下のような特徴的な原因があります。
交差点での右折時の誤り
一般道では、特に「交差点での右折時」に逆走が発生しやすくなっています。片側一車線の場合は右折したすぐ先に対向車がいるため逆走は比較的発生しにくいですが、片側二車線以上の広い道路では、右折時に誤って反対車線に入ってしまうケースが存在します。
広い道路には中央分離帯が設置されていることも多く、本来右折する場合は中央分離帯の"奥側"へ進まなければなりません。しかし、誤って中央分離帯の"手前"に進入し、反対車線を逆走してしまうことがあるのです。特に普段通り慣れていない大きな交差点などでは、このようなミスが発生しやすくなります。
右折時のショートカット行為
運転の仕方によっても逆走が発生することがあります。右折時に交差点の中心付近まで前に出ず、ショートカットして曲がっていくドライバーの場合、反対車線の右折レーンに入ってしまったりすることがあります。
右折するために信号待ちをしているクルマが、青になった途端、対向車がいるにも関わらずショートカットして右折していく行為は、逆走の危険性があるだけでなく、対向車との衝突事故や、横断歩道での対歩行者事故につながる可能性もある危険な行為です。
標識の見落としや混同
一般道での逆走では、進入禁止の標識を見落としていることが多いようです。また、一方通行の標識と類似した「左折可」の標識や「指定方向外進行禁止」の標識を混同してしまい、誤って進入してしまうケースもあります。
一方通行とは「その道を通る場合には、一方向にしか通行できない」ということであり、法律で定められた一方通行の道を逆走することは違反となります。しかし、標識の類似性から混乱が生じることがあるのです。
その他の場所での逆走
駐車場での逆走
駐車場でも逆走は頻繁に発生しています。アンケート調査によると、駐車場でイラッとした経験として「逆走」が56.4%と最も高い割合を示しています。「出口が近いから」「レーンが満車で戻りたいから」など様々な理由で逆走が行われているようです。
逆走対策と安全運転の心得
高速道路会社による対策
現在、高速道路上ではさまざまな逆走防止対策が実施されています。例えば、高速道路の路面等に矢印を表示して車両の進行方向を示したり、合流部分にラバーポールを設置したりすることで、逆走を防止しています。
また、逆走をしてしまいそうな車両へ注意を呼び掛ける標識も設置されています。反対方向に進もうとしているドライバーに「こちらへは進めません」と知らせることで、逆走を未然に防ぐ工夫がなされています。さらに、逆走車を感知したときにだけ発光し、「逆走戻れ」のように警告を表示して、逆走していることに気付かせる表示板も導入されています。
ドライバーが取るべき対応
高速道路で行き先を間違えた場合は、絶対にバックやUターンをせず、以下のように対処することが推奨されています:
- 降りるインターチェンジを通り過ぎてしまったら→次のインターチェンジまで走行し、出口料金所スタッフに申し出て指示に従う
- 間違えて高速道路の入り口に入ってしまったら→そのまま入口料金所まで進み、インターホンで料金所スタッフに申し出て指示に従う
また、逆走してしまったことに気づいた場合は:
- 安全な場所に停車しハザードランプを点灯させる
- 安全な場所に避難する
- 110番または非常電話で通報する
結論:意識と注意で防げる逆走事故
逆走は様々な原因で発生しますが、多くの場合は注意深い運転によって防ぐことができるものです。特に高齢になるにつれて認知機能や判断力の低下が見られますので、自分の運転能力を過信せず、定期的に運転診断を受けることも重要です。
また、高速道路では常に標識や案内表示に注意を払い、行き先を間違えた場合でも冷静に対処することが重要です。一般道では特に交差点での右折時に注意し、適切な運転ラインを守ることで逆走のリスクを減らすことができます。
逆走は誰にでも起こりうるミスから発生することが多いですが、その結果は深刻な事故につながる可能性があります。ドライバー一人ひとりが逆走の危険性を認識し、安全運転を心がけることが何よりも重要です。
参考情報
- 国土交通省 – 高速道路の逆走事故に関する統計データ
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-data/traffic/pdf/highway_reverse_drive.pdf - 東日本高速道路株式会社 – 逆走防止対策の取り組み
https://www.e-nexco.co.jp/safety/reverse_drive_prevention/ - 警察庁交通局 – 一般道における逆走事故の実態調査
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/reverse_drive_report.html


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