生物濃縮とプランクトン:海の食物連鎖で進む環境汚染の仕組み

自然

海洋環境における生物濃縮は、プランクトンから始まり生態系全体に影響を及ぼす重要な現象です。この記事では、プランクトンがどのように生物濃縮の起点となり、食物連鎖を通じて有害物質がどのように濃縮されていくのかを詳しく解説します。

生物濃縮とは?基本的な仕組みを理解しよう

生物濃縮とは、特定の物質が生物の体内に高濃度で蓄積される現象です。通常、生物が餌や水から取り入れる物質のほとんどは生きるために使われ、不要な物質は体外に排出されます。しかし、分解や排出ができない物質は体内に残り続けます。

生物濃縮が起こる物質には、主に以下の2つの特徴があります:

  • 分解されにくい性質
  • 体外に排出されにくい性質

これらの特徴を持つ物質は一度体内に取り込まれると、そこにとどまり続け、食物連鎖を通じて上位の生物へと移行・濃縮されていきます。

生物濃縮される代表的な物質

生物濃縮されやすい物質としては、以下のようなものがあります:

  • DDTなどの残留性有機汚染物質(POPs)
  • PCB(ポリ塩化ビフェニル)
  • 重金属(水銀、鉛、亜鉛など)
  • マイクロプラスチックに吸着した有害物質

これらの物質は水に溶けにくく、脂質と結びつきやすい性質を持っていることが多いです。

プランクトンが生物濃縮の起点となる仕組み

海洋の食物連鎖において、プランクトンは最も基礎的な位置にあります。水中に存在する汚染物質は、まずこのプランクトンに取り込まれることで生物濃縮が始まります。

植物プランクトンによる取り込み

水中に極微量に存在する汚染物質は、まず植物プランクトンに取り込まれます。例えば、海水中のメチル水銀濃度は1.14-1.96 fMという非常に低い濃度ですが、これが植物プランクトンに取り込まれると濃縮が始まります。

植物プランクトンの種類によって、重金属などの有害物質への感受性や濃縮率は大きく異なることが研究で明らかになっています。例えば:

  • シアノビウム(NIES-981)は亜鉛と銅に対して鋭敏に反応する
  • エミリアニア(NIES-1310)はさまざまな金属に対して耐性を持つ

このように、プランクトンの種類によって汚染物質の取り込み方が異なることが、生態系内での汚染物質の動態に影響を与えています。

植物プランクトンからの濃縮係数

植物プランクトンにおける重金属の濃縮係数(生物体内の濃度と環境中の濃度の比)は、物質によって大きく異なります:

  • 鉛(Pb):<1,000~2,000,000倍
  • マンガン(Mn):300~7,000倍
  • クロム(Cr):<70~600倍
  • 鉄(Fe):750~70,000倍
  • 亜鉛(Zn):200~1,300倍

これらの数値から、プランクトンが環境中の有害物質を数百から数百万倍に濃縮する能力を持っていることがわかります。

食物連鎖による生物濃縮の進行

プランクトンに取り込まれた有害物質は、食物連鎖を通じてより高次の生物へと移行していきます。この過程で、栄養段階が上がるにつれて汚染物質の濃度も高まっていきます。

食物連鎖による濃縮の仕組み

食物連鎖による濃縮は、次のように進行します:

  1. プランクトンが汚染物質を取り込み、体内に蓄積する
  2. 小魚がプランクトンを大量に食べることで、汚染物質を取り込む
  3. 中型魚が小魚を食べ、さらに汚染物質が濃縮される
  4. 大型魚や海鳥などの上位捕食者がさらに高濃度の汚染物質を蓄積する

例えば、ある研究では水中のある汚染物質の濃度が0.000003ppmだったのに対し、プランクトンでは0.04ppm、さらに上位の捕食者であるペリカンやミサゴでは非常に高濃度になったことが報告されています。

食物連鎖の影響がわかる具体例

生物濃縮の具体例として、以下のようなケースがあります:

  • フグ毒:海中の細菌が生成するテトロドトキシンが食物連鎖を経てフグに蓄積される
  • 貝毒:有毒プランクトンの毒素が貝に蓄積される
  • 水俣病:メチル水銀が生物濃縮され、魚介類を通じて人間に被害をもたらした

これらの事例は、生物濃縮が人間社会に直接的な影響を及ぼす可能性を示しています。

生物濃縮とマイクロプラスチックの新たな問題

近年、海洋環境で新たな問題となっているのがマイクロプラスチックです。マイクロプラスチックには有害物質を吸着する性質があり、生物濃縮の媒体となる可能性があります。

プランクトンとマイクロプラスチック

研究によれば、動物プランクトンはマイクロプラスチックを摂取することが確認されています。動物プランクトンがマイクロプラスチックを取り込むと、脂質代謝に障害が起きるなどの影響が見られます。

マイクロプラスチックの表面には、PCBsやDDEなどの有害物質が海水中の濃度より高濃度で吸着しています。これらのマイクロプラスチックをプランクトンが摂取することで、有害物質の生物濃縮が進む可能性があります。

生物濃縮による環境と人間への影響

生物濃縮が進むと、環境や人間に様々な影響を及ぼします。

生態系への影響

栄養段階の上位になるほど汚染物質の濃度が高まると、次のような影響が生じる可能性があります:

  • 上位捕食者において致死量に達する濃度となり、死滅する
  • キーストーン種(生態系の中で重要な役割を果たす種)が減少すると、生態系全体のバランスが崩れる
  • 生殖機能や免疫機能に障害が生じ、個体数の減少につながる

これらの影響は海洋生態系の崩壊を引き起こす可能性があります。

人間への健康影響

食物連鎖の最上位にいる人間も、生物濃縮の影響を受ける可能性があります:

  • 水俣病:工場から排出されたメチル水銀が海洋生物に蓄積し、それを食べた人々に神経障害を引き起こした
  • 長期的な低濃度曝露による健康影響のリスク
  • 特に妊婦や子どもなど感受性の高い人々への影響の懸念

これらの健康リスクは、持続的な環境モニタリングと規制強化の必要性を示しています。

生物濃縮対策と今後の取り組み

生物濃縮による環境汚染を防ぐため、国際的な取り組みや個人レベルでの対策が進められています。

国際的な取り組み

2004年に「POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)」が発効され、POPsの製造中止や使用規制、廃棄物適正処理に取り組むことが国際的に合意されました。当初は日本を含め50カ国だった加盟国も、2020年3月には181か国まで増加し、世界規模でのPOPsの規制や管理が進んでいます。

個人でできる対策

私たち個人レベルでも、生物濃縮を防ぐための取り組みができます:

  • 環境に配慮した製品を選ぶ(成分やリサイクルの可否をチェックする)
  • ゴミは適切なルールに従って処分する
  • マイクロプラスチックの発生源となるプラスチック製品の使用を減らす

海洋環境を守るためには、政府や企業の取り組みだけでなく、私たち一人ひとりの意識と行動が重要です。日常生活での小さな心がけが、プランクトンから始まる生物濃縮を減らし、健全な海洋生態系の維持につながります。

参考情報

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