プラスチックごみによる環境問題が深刻化する中、分解されて自然に還る「生分解性プラスチック」が今、大きな注目を集めています。この記事では、そんな生分解性プラスチックの基礎知識から家庭での作り方まで、詳しくご紹介します。普段何気なく使っているプラスチック製品を環境にやさしいものに変えていくヒントが満載!ぜひ最後までお読みください。
生分解性プラスチックとは?その特徴と仕組み
生分解性プラスチックは、環境中の水分により加水分解を受けて低分子化され、最終的には微生物などによって二酸化炭素と水にまで分解されるプラスチックのことです。通常のプラスチックは自然界で分解されずに何百年も残り続けますが、生分解性プラスチックは微生物の働きによって分子レベルまで分解されたのち、自然界へ循環していきます。
生分解性プラスチックの大きな特徴は以下の点です:
- 微生物によって最終的に水と二酸化炭素に分解される
- 分解スピードは環境条件(土壌・水中・コンポスト)によって異なる
- 通常の環境では形状を保ちながら使用可能
例えば、ポリ乳酸(PLA)は通常の環境下ではほとんど分解せず、土壌や水中でも分解速度は早くありませんが、コンポストのなかに置くことで、半年程度でほぼ分解されます。このように用途に合わせた分解性能を持っているのが大きな特徴といえるでしょう。
生分解性プラスチックの原料と種類
生分解性プラスチックは原料によって大きく3つに分類できます。
1. バイオマス由来の生分解性プラスチック
再生可能資源を原料とするもので、代表的なものには以下があります:
- ポリ乳酸(PLA):トウモロコシなどのデンプンから合成される
- PHA(ポリヒドロキシアルカン酸):植物油などを原料としてバクテリアによる発酵により生成される
- デンプン混合物:様々な植物デンプンを使用し、他のバイオポリマーと組み合わせて物理的特性を向上させたもの
これらは堆肥化可能で、コスト効率が良いものが多いのが特徴です。
2. 石油由来の生分解性プラスチック
石油を原料としながらも、微生物によって分解される性質を持つプラスチックです。バイオマス由来のものと比べるとまだ普及は進んでいませんが、研究開発が進められています。
3. 混合由来の生分解性プラスチック
バイオマスと石油の両方を原料として作られるプラスチックで、それぞれの長所を生かした製品開発が行われています。
重要なポイントは、生分解性プラスチックは原料が限定されているわけではなく、最終的にCO2と水に分解されるかどうかが重視される点です。
生分解性プラスチックの製造方法
生分解性プラスチックの製造方法は、大きく分けて「発酵法」と「化学合成法」の2つがあります。
発酵法
植物由来の糖類・油脂から生成したエタノールで樹脂を作る方法です。具体的なプロセスは以下の通りです:
- バイオマスの収集(サトウキビ、トウモロコシ、キャッサバなど)
- バイオマスの前処理(洗浄、粉砕、乾燥)
- 糖の抽出
- 微生物(通常は酵母)による発酵
- モノマーの抽出
- ポリマー合成
- プラスチック成形
化学合成法
植物原料や化石資源の化学反応を利用する製法です。例えば、ポリ乳酸(PLA)の場合は、デンプンを酵素で加水分解して発酵させ、L-乳酸から化学的な重合反応で合成します。
油脂原料を使用する場合は、以下のプロセスで製造されます:
- 油脂の選定と精製(大豆油、パーム油など)
- モノマーの生成(油脂を分解して脂肪酸を取り出す)
- 脂肪酸の重合
- ポリマーの精製
- プラスチック成形
これらの製造過程では、可塑剤、核剤、潤滑剤などの添加剤を配合することも一般的です。これらの添加剤は、分解能力に基づいて選択され、最終製品の生分解性を維持するために、通常は天然の再生可能な資源から供給されます。
家庭でできる生分解性プラスチックの作り方
実は、生分解性プラスチックの一種は家庭でも簡単に作ることができます!ここでは「カゼインプラスチック」の作り方をご紹介します。
必要な材料
- 牛乳 200mL
- お酢またはレモン汁 適量
- 鍋
- ガーゼやキッチンペーパー
- めん棒(あれば)
- クッキーの型(あれば)
- 電子レンジ
作り方の手順
- 牛乳を鍋で約80℃まで加熱します。
- 火を止めてからお酢またはレモン汁を少しずつ加え、よくかき混ぜます。
- 白い固まり(カゼイン)と透明な液体に分離したら、ガーゼでこして固形物を取り出します。
- ガーゼに入れたまま水でよく洗います。
- カゼインの水気をキッチンペーパーでよく切ります。
- めん棒で平らにして形を整えます(クッキー型などで抜くとかわいい形になります)。
- 電子レンジ500Wで、固くなるまで乾燥させます。
完成したカゼインプラスチックは、土に埋めておくとボロボロになって分解されます。通常のプラスチックとの分解スピードの違いを観察する実験としても楽しいですよ。
ポイント
- 牛乳の代わりに豆乳を使用することもでき、豆乳のほうがカゼインが多く分離できるため、生分解性プラスチックの生成効率が良いとされています。
- 絵の具を混ぜることで、カラフルなプラスチックを作ることもできます。
- 作ったプラスチックの強度は、乾燥時間や厚みによって調整できます。
生分解性プラスチックの活用事例と課題
現在、生分解性プラスチックはさまざまな分野で活用されています:
- 農業用のマルチシートやハウスのフィルム
- 食品包装材やレジ袋
- 繊維製品
- 使い捨て食器や容器
しかし、生分解性プラスチックにはいくつかの課題もあります:
課題
- 強度の問題:従来のプラスチックと比べて「硬くて脆い」という特性があります。
- コスト:製造コストが従来のプラスチックより高くなる傾向があります。
- 分解環境の整備:適切に分解するための堆肥化センターなどのインフラが不足しています。
- 分解スピードのコントロール:使用中は分解されず、廃棄後に適切に分解されるようにするバランスが難しい面があります。
これらの課題に対して、研究者や企業はさまざまな解決策を模索しています。例えば、生分解性プラスチックに天然ゴムを混ぜることで、ゴムの粘り強さを活かす研究や、より豊富に入手できる代替原材料の研究、製造プロセスの効率化などが進められています。
生分解性プラスチックの将来性と私たちにできること
生分解性プラスチックは、プラスチックごみ問題や化石資源依存からの脱却に大きく貢献する可能性を秘めています。特に、バイオマス由来の生分解性プラスチックは、植物が成長する際にCO2を吸収するため、焼却時にCO2が発生しても実質的な排出量はゼロとなる「カーボンニュートラル」を実現できるメリットもあります。
私たちにできることとしては:
- 生分解性プラスチック製品を積極的に選ぶ
- 正しい廃棄方法を学び、実践する
- 家庭でカゼインプラスチックを作って実験し、理解を深める
- プラスチックの使用量そのものを減らす努力をする
などが挙げられます。
生分解性プラスチックの技術はまだ発展途上ですが、環境問題への意識の高まりとともに、さらなる研究開発や普及が進むことが期待されています。私たち一人ひとりの選択が、未来の環境を守ることにつながるのです。
環境にやさしい素材である生分解性プラスチックについて理解を深め、できることから始めてみませんか?家庭でカゼインプラスチックを作る実験は、お子さんとの夏休みの自由研究にもピッタリです。ぜひチャレンジしてみてください!
参考情報:
「生分解性プラスチックとは?注目の背景・今後の課題と活用のコツ」 https://sus.i-goods.co.jp/columns/5250
「川口市立科学館のサイエンスショー」 https://www.youtube.com/watch?v=T0SUytVoAxk
「バイオマスプラスチックの製造方法とは?」 https://www.maruisangyou.co.jp/column/column-38/

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