トンネルコンポスト方式は環境に優しい廃棄物処理方法として注目されていますが、実際に導入を検討している自治体や個人が知っておくべき課題も多くあります。本記事では、トンネルコンポスト方式のデメリットを徹底解説し、その解決策についても詳しく紹介します。
トンネルコンポスト方式とは何か
トンネルコンポスト方式は、生ごみやプラスチック、紙などが混在する可燃ごみを破砕混合し、バイオトンネルと呼ばれるコンクリートの密閉発酵槽へ投入する処理方法です。微生物が生ごみを発酵分解し、その発酵熱を利用してプラスチックや紙などを乾燥処理する好気性発酵乾燥方式の一種です。
この方式の特徴は「燃やさない」処理方法であり、発酵槽内は微生物の働きにより約70度の高温となり、微生物で分解されないプラスチックごみ、紙ごみ、繊維くずなどの水分が蒸発して乾燥されます。これらは製紙会社等のバイオマスボイラーで使用される固形燃料として資源化されるのが特徴です。
固形燃料の需要問題
安定的な引取先確保の課題
トンネルコンポスト方式の最大のデメリットは、処理後に生成される固形燃料の引取先を安定的に確保することの難しさです。固形燃料は市場価値が低く需要が少ないため、製紙工場等の利用先を事前に確保する必要があります。
自治体のごみ量によっては相当量の固形燃料が製造されるため、それだけの量を継続的に引き取ってもらえる企業との長期契約が必須となります。四国中央市では市内製紙業者2社が受け入れ可能との回答を得ていますが、多くの自治体では供給先がないことを理由に導入を断念しています。
引取先がない場合の対応
固形燃料の供給先が確保できない場合、自治体は以下のような対応を強いられます:
- 他都市や民間施設に有料で処理委託する必要がある
- 埋立処分せざるを得なくなる
- 結果として追加コストが発生する
これらの問題は、トンネルコンポスト方式を導入する際に最も重要な検討課題となります。
必要敷地面積の問題
広大な土地が必要
トンネルコンポスト方式では、バイオトンネルの整備に相当な敷地が必要となります。函館市の例では、三豊市の事例を当てはめた場合、約4万2千㎡もの広大な敷地が必要と算出され、適地を見つけることは非常に難しいとされています。
四国中央市でも、トンネルコンポスト施設建設に必要な土地として4haが必要とされ、候補地の調査が行われています。このような広大な敷地の確保は、特に都市部の自治体にとって大きな障壁となります。
土地確保の対策
広大な土地の確保には、以下のような取り組みが考えられます:
- 不動産鑑定士による建設候補地の調査
- 建設コンサルタントによる候補地の評価と順位付け
- 地質調査などの追加調査の実施
臭気問題とその対策
発酵過程での臭気発生
トンネルコンポスト方式では、発酵過程で臭気が発生します。これはコンポスト全般に見られる問題ですが、特に大規模な施設では周辺環境への影響が懸念されます。
コンポストは基本的に発酵過程ですっぱい臭いが発生しますが、適切に管理された発酵では、このすっぱい臭いはむしろ「きちんと発酵している証拠」と捉えることもできます。
臭気対策の方法
臭気問題に対しては以下のような対策が考えられます:
- 密閉式のコンポストシステムの導入
- 脱臭フィルターの設置
- 適切な量の土や枯葉、もみ殻、米ぬかなどを入れる
- 市販の発酵促進剤の活用
技術的な課題
塩素濃度の問題
トンネルコンポスト方式の技術的な問題点として、処理過程における塩素濃度が高くなることが挙げられています。これは腐食性ガスの発生につながり、設備の劣化を早める可能性があります。
三豊市の処理施設では、この問題に対処するため、固形燃料の原料製造までの処理を行い、その原料を民間の産業廃棄物処理施設において産業廃棄物と混合して固形燃料とすることで、塩素濃度を低減しています。
設備トラブルの可能性
三豊市の施設では、平成29年度から稼働している中で、破砕系等のトラブルが2件ほど確認されていますが、それ以外では大きなトラブルなく稼働していることが報告されています。しかし、長期運用での設備の耐久性や維持管理コストについては、まだ十分なデータが蓄積されていません。
実績の少なさによる不確実性
国内での導入例が限定的
トンネルコンポスト方式は、国内では香川県三豊市の一例しかなく、他の自治体とは施設規模等に相当な違いがあるため、「ごみを安全かつ安定的に処理できる施設」として判断するには十分な検証が必要とされています。
国内での事業実績が少なく情報が限られているため、導入を検討する自治体は、この事業に精通したコンサルタント会社に委託して調査・検証を行う必要があります。
導入検討の現状
様々な自治体の議員が三豊市の施設を視察していますが、実際に採用している自治体はほとんどありません。多くの自治体が、固形燃料の供給先がないことなどを理由に導入を断念しています。
災害廃棄物処理の問題
混合物に弱い特性
トンネルコンポスト方式は、焼却施設に比べて混合物に弱い傾向があります。これは災害廃棄物の処理において大きな課題となります。災害時には様々な廃棄物が混合状態で発生するため、トンネルコンポスト方式では効率的な処理が難しい場合があります。
災害廃棄物対策の方法
四国中央市では、この問題に対して以下のような対策を検討しています:
- 県内外の産業廃棄物処理事業者との処理に係る協定を事前に締結
- 周辺自治体との災害廃棄物処理に係る協定の締結
- 大規模災害時には県・国指導のもと、仮設焼却施設を設置し焼却対応
- 市内の製紙会社のバイオマスボイラーでの処理の検討
その他のコンポスト一般のデメリット
堆肥化の時間と手間
コンポスト全般のデメリットとして、堆肥になるまでに手間や時間がかかることが挙げられます。容器や装置、設置場所などにより数時間から4カ月程度かかり、その間も定期的なかき混ぜが必要な場合があります。
分解できない材料の制限
コンポストは微生物による分解を利用するため、微生物が分解できない材料は使用できません。生ごみでも、タケノコの皮やクリの皮など、微生物が分解しにくい食品があります。
特に以下のようなものは分解が難しいとされています:
- たまねぎやニンニクの皮
- 固い野菜の皮
- アボカドのような大きめの種
- かんきつ類
- 動物や魚の骨
- 卵の殻
- 髪の毛
また、以下のものはコンポストに入れるべきではありません:
- 化学成分、添加物入りのもの
- プラスチック
- 液体(牛乳やみそ汁など)
- 味が濃いもの、刺激物
- 貝殻
トンネルコンポスト方式導入の将来性
トンネルコンポスト方式は、「燃やさない」環境に優しいごみ処理技術として注目されていますが、現状では様々な課題があります。しかし、固形燃料の需要先確保や技術的な問題の解決が進めば、従来の焼却方式に代わる選択肢として普及する可能性もあります。
特に製紙工場などバイオマスボイラーを持つ産業が地域に存在する場合は、固形燃料の需要先として連携できる可能性があります。四国中央市のように、地域の特性を活かした導入検討は今後も増えていくかもしれません。
まとめ:トンネルコンポスト方式導入検討のポイント
トンネルコンポスト方式のデメリットを踏まえると、導入検討には以下のポイントが重要です:
- 固形燃料の安定的な需要先の確保が最も重要
- 必要な敷地面積の確保可能性の検討
- 臭気対策の徹底
- 塩素濃度など技術的課題への対応策の検討
- 災害廃棄物処理への備え
- 自治体の特性や地域産業との連携可能性の精査
トンネルコンポスト方式は導入事例が少なく課題も多いものの、環境負荷の低減や資源循環の観点から、今後の技術発展と社会的受容の広がりによっては、より多くの自治体での採用が進む可能性を秘めています。導入を検討する際は、地域の特性に合わせた綿密な調査と計画が欠かせません。
【参考サイト】
函館市 – 再度 市の新たなごみ処理施設について
https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/citizensvoice/docs/2019040900018/
チバニアン兼業農学校 – トンネルコンポストで生む未来の農業
https://chibanian.info/20240502-486/
四国中央市 – 可燃ごみ処理施設の再編について
https://www.city.shikokuchuo.ehime.jp/uploaded/attachment/21641.pdf


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