日本の生成AI普及率はなぜ伸び悩んでいるのか?活用の鍵と今後の展望

技術

 ChatGPTの登場から約2年半が経過し、生成AIの技術は飛躍的に進化しています。プロンプトに対する回答精度の向上だけでなく、業務補完や画像・動画生成など多様な用途で活用され始めていますが、日本ではその普及がなかなか進まない現状があります。
GMOリサーチ&AIの最新調査によると、認知度は高いものの実際の利用率は伸び悩んでおり、特に企業での活用については欧米や中国に比べて大きく後れを取っています。この記事では、日本における生成AI普及の現状と課題、そして今後の展望について詳しく解説します。

日本における生成AIの認知度と利用状況

GMOリサーチ&AIが実施した「AIトレンドに関する自主調査」によると、生成AIを認知していると回答した人は72.4%で、2023年11月の調査開始時点(71.1%)からほぼ横ばいに推移しています。認知度自体は比較的高い水準にあるものの、実際に使用したことがある人は42.5%にとどまっています。これは2024年2月調査時の33.5%から9ポイント上昇していますが、認知度と比較するとその差は大きく、知っていても使わない層が相当数存在することが分かります。

興味深いのは、すでに生成AIを利用している人の60.6%が「使用時間・回数が増えた」と回答している点です。一方、「利用が減った」と答えた人はわずか2.8%にすぎません。つまり、一度生成AIの価値を見出した人は継続的に、そして増加傾向で利用していることが明らかになっています。

最も利用されている生成AIツール

生成AIツールの中では「ChatGPT」が圧倒的な人気を誇っています。2024年6月の調査では利用者の61.8%がChatGPTを最も利用していると回答しており、その割合は3ヶ月前と比較して13.4ポイント増加しています。この背景には、2024年5月に発表された新モデル「GPT-4o」による応答速度の向上や日本語能力の改善、API利用料金の半減などが影響していると考えられます。

生成AIを利用しない人々の理由

生成AIを利用していない理由としては、「必要性を感じない」が68.0%でトップとなっています。この結果は、多くの人々が生成AIの具体的な活用方法やメリットをまだ理解していないことを示唆しています。

また、「使い方がわからない/難しそう」と回答した人も36.2%と続いており、生成AIの操作方法やプロンプトの書き方などの技術的なハードルも利用拡大の障壁になっていることが伺えます。日米比較調査では、業務で生成AIを利用していない理由として両国とも約40%の人が「生成AIの利用方法がわからないから」と回答しています。

個人利用と業務利用の差

個人的な利用に比べて、業務での活用はさらに遅れています。GMOリサーチ&AIの調査によると、生成AIの業務利用状況については「日常的に利用している」と「ときどき利用している」を合わせても19.2%に過ぎません。これは2024年8月時点の15.7%からわずかに上昇しているものの、約8割の人が業務で生成AIをほとんど活用できていないことを意味します。

企業における生成AI活用の現状と課題

帝国データバンクが2024年に実施した調査によると、日本企業の生成AI活用率はわずか17.3%にとどまっています。業種別では、サービス業が比較的活用が進んでいるのに対し、建設・不動産業は低い活用度合いとなっています。

企業規模による差も顕著で、従業員1000人以上の大企業では活用率が36.9%と比較的高い一方、中規模企業(従業員50〜1000人、売上高1〜100億円)では活用度合いが低くなっています。

企業が感じる懸念事項

生成AIの業務利用に関する懸念事項としては以下が挙げられています:

  1. データプライバシーとセキュリティ(30.0%)
  2. 著作権や知的財産権の問題(24.7%)
  3. AIによる意思決定の透明性と説明可能性(20.0%)

これらの懸念事項は2024年8月の時点から大きく変わっておらず、多くの企業が解決策を見出せていない状況が続いています。また、企業のリスク対応についても約45%の企業では特に対応部門を定めていないという課題があります。

さらに、AI運用のための人材・ノウハウ不足も大きな課題となっており、54.1%の企業がこれを懸念点としてあげています。『人事白書2024』によると、AI人材が「足りていない」と答えた企業は約6割にのぼり、「充足している」企業は5%未満にとどまっています。

諸外国との比較で見る日本の遅れ

国際比較では、日本の生成AI活用への積極性の低さが浮き彫りになっています。『令和6年版情報通信白書』によると、日本企業の生成AI活用に対する積極的な意向はわずか15.7%にとどまり、中国の71.2%と比較すると非常に低い水準です。

個人利用についても同様の傾向が見られます。日本での個人の利用率は9.1%であるのに対し、米国は46.3%、中国は56.3%と大きな開きがあります。

日米比較調査では、勤務する会社への生成AIの影響を「チャンス」と考える人の割合が米国は日本の約2倍となっており、日本では生成AIに対してより慎重な見方が広がっていることが分かります。

生成AI活用の成功に向けたポイント

生成AIの活用を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。

トップダウンによる全社的な展開

生成AI導入の成功には、経営層の積極的なコミットメントが不可欠です。トップダウンのアプローチにより、部門を横断した包括的な活用が促進されます。企業における活用姿勢が「積極的」であるほど、社員が生成AIを「チャンス」と捉える割合が高まるという相関関係も確認されています。

具体的なユースケースの共有

生成AIを「必要性を感じない」と考える人が多い現状を変えるためには、具体的な成功事例の共有が効果的です。実際に使用して成功体験を得ることで、その価値を実感できるようになります。生成AIの業務利用経験者は未経験者と比べて「チャンス」と考える人の割合が日本で56ポイント、米国で36ポイント増加するというデータもあります。

セキュリティ対策とガイドラインの整備

データプライバシーやセキュリティ、著作権問題などの懸念に対処するためには、明確なガイドラインの策定が必要です。GMOリサーチ&AIの調査によると、5割以上の企業がガイドライン策定に前向きな姿勢を示しています。すでに生成AIを活用している企業では対応策が示されていることから、これらの先行事例を参考にすることも有効でしょう。

今後の展望:デジタル競争力強化に向けて

最近ではさまざまなアプリ内で生成AIが活用されるようになっており、今後は気づかないうちに生成AIの恩恵を受ける機会が増えていくと予想されます。しかし、日本企業が生成AIの活用で欧米や中国に後れを取り続ければ、すでに活用している企業とそうでない企業の差は開く一方となるでしょう。

これからの数年は、生成AIの活用が企業の競争力を左右する重要な分岐点になると考えられます。まずは小規模なプロジェクトから始め、成功体験を積み重ねていくアプローチが有効です。また、政府による企業導入を後押しする具体的な推進策も望まれています。

日本企業が生成AIの波に乗り遅れないためには、人材育成と技術への投資、そして組織文化の変革が不可欠です。技術的なハードルを下げる教育プログラムの実施や、成功事例の共有により、より多くの人々が生成AIの可能性を理解し、活用できるようになることが期待されます。

参考情報

Forbes JAPAN「生成AIの利用率、日本であまり上がらない理由」 https://forbesjapan.com/articles/detail/78406

IT Leaders「生成AIの業務利用率は 36.9% で横ばい、積極的な利用は増加傾向─GMOリサーチ&AI調査」 https://it.impress.co.jp/articles/-/27713

GMOリサーチ&AI「【定点調査レポート(AIトレンド)】生成AIの認知度は横ばいで推移」 https://gmo-research.ai/pressroom/survey/voluntary-survey-20250408

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