「稼ぐために健康を失い、健康を取り戻すために稼ぎを失う」——ゲシェ・マイケル・ローチ/心を極める THE DIAMOND CUTTER/労働と休息の絶対的バランス

「この忙しさも、もう少しの辛抱だ」「子どもが大きくなったら、もう少し余裕が出てくるはずだ」「定年になったらゆっくりしよう」――こうした言葉で日々の疲弊を先送りにしながら働き続けた結果、いざ「余裕が生まれる時」が来ても、健康や活力が失われていて、せっかく手にした豊かさを楽しむ能力がなくなっている――そんな皮肉な結末を迎えた方を、あなたの周囲でも見たことがないでしょうか。

『心を極める THE DIAMOND CUTTER』の著者ゲシェ・マイケル・ローチは、この本末転倒を厳しく指摘します。ビジネスで富を築くことは重要だが、心身を疲弊させてその富を楽しむ能力を失うことは、カルマの視点から見ても根本的な誤りだ――そして健康を維持し、富を享受する余裕を持つこと自体が、カルマの目的に含まれると著者は説きます。

成果を出すために自分を削り続けることへの、根本からの問い直しを今回お届けします。

心を極める THE DIAMOND CUTTER
ビジネスの成功、心の豊かさ、そして人生の深い幸福――。それらを無理なく同時に手に入れるための“再現性ある方法”を示すのが『心を極める』です。根底にあるのは、2500年前の『金剛般若経』が説く「潜在性」という視点。私たちの経験・成功・問題・人...

「後で楽しむ」は存在しない

現代の管理職が陥りやすい思考パターンのひとつが、「今は我慢して後で楽しむ」という先送りの発想です。今は忙しいから健康管理は後回し、今は余裕がないから家族との時間は後で、今は仕事が大変だから趣味は定年後――こうした選択が積み重なっていきます。

しかし著者の視点からすると、この先送りには重大な問題があります。富を楽しむ能力は、富を得る過程と切り離せません。仕事に全力を注ぐ20年間を経て手にした豊かさを、疲弊した心身で楽しもうとしても、その能力はすでに衰えています。ゴルフを楽しむ体力が残っていない、子どもとの関係が疎遠になっている、家族と会話する習慣が消えている――これらは先送りの自然な帰結です。

カルマの法則の観点では、富を享受する能力もまた、種によって育てられます。今この瞬間の小さな豊かさを受け取り、楽しむ習慣が、将来の大きな豊かさを享受する能力の種になります。先送りは、この種を蒔く機会を失い続ける行為でもあります。

疲弊は「努力の証拠」ではない

日本のビジネス文化では、疲れていることが「一生懸命働いている証拠」として肯定される傾向があります。「忙しい」と言える人間が優秀に見え、「余裕がある」ように見える人間が怠けているように見える――この文化的な逆転が、多くの管理職を慢性的な疲弊へと追い込んでいます。

著者が言う労働と休息のバランスとは、努力を減らすことではありません。疲弊した状態での仕事は、判断力を低下させ、感情的な反応を増やし、創造性を削ぎ、長期的な生産性を著しく下げます。適切な休息を取ることは、パフォーマンスを下げるのではなく、持続可能な高いパフォーマンスを維持するための必須条件です。

著者が年商数百億円の企業役員として高い成果を出し続けながら、ギャップ・デイの実践や瞑想習慣を手放さなかったのは、これを知っていたからです。休息は怠惰ではなく、高品質な仕事を持続させるための戦略的な投資です。

「富を楽しむ能力」を今から育てる

富を楽しむ能力が種によって育てられるとすれば、その種をいつ蒔くかは今です。将来のためではなく、今この瞬間から始められる小さな享受の習慣が、その能力を育てます。

昼休みに窓の外の空を5分眺める。帰り道に少し遠回りして好きな景色を通る。週末の朝、仕事のメールを開く前にコーヒーを一杯ゆっくり飲む――これらは生産性を下げる時間の無駄ではありません。今あるものを享受する能力を育てる、確かな種です。

管理職として成果を追い求めることと、日々の小さな豊かさを受け取ることは、対立しません。むしろ後者が前者を持続可能にする土台です。
今の小さな享受が、将来の大きな豊かさを受け取る能力を育てる。
この認識が腑に落ちたとき、休むことへの罪悪感が薄れ、より賢い時間の使い方が見えてきます。

健康はカルマの目的に含まれる

著者が最も明確に述べていることのひとつが、健康を維持すること自体がカルマの目的に含まれるという点です。これは精神論的な格言ではなく、著者の因果律の系論として導かれる主張です。

富を得ることのカルマ的な目的は、その富によってより多くの人々に貢献し、自らも豊かに生きることにあります。しかし健康を失えば、その貢献も享受も不可能になります。貢献する能力を守るための健康管理は、したがってカルマの実践の一部です。

管理職として部下を率いる役割においても、このことは重要です。心身が疲弊したマネジャーは、部下の微妙なサインを見落とし、感情的な判断を下しやすく、長期的な視点を失います。あなた自身の健康と余裕を守ることは、チームへの最大の貢献のひとつでもあります。体を壊してから「部下のために」は、できません。

家族と「今の豊かさ」を分かち合う

労働と休息のバランスは、家庭という場所でこそ最も直接的に問われます。仕事に全力を注ぐことと、家族と豊かな時間を過ごすことは、多くの管理職にとって永遠の綱引きです。

しかし著者の視点は、この問いを再構成します。家族との時間は、「仕事の後の余力でやること」ではなく、今この瞬間の豊かさを受け取る能力を育てる、カルマの実践そのものだと位置づけます。子どもの笑顔を本気で受け取ること、妻とゆっくり食事をする夜を大切にすること――これらは仕事との時間の奪い合いではなく、互いに支え合う実践です。

今夜、仕事より早く帰れる日に、家族と食卓を囲む時間を意識的に持つ。それだけのことが、「今の豊かさを受け取る」という種として機能します。将来ゆっくりしようと思ったとき、その能力がある自分でいるために、今日の小さな選択が必要です。

「稼ぐこと」と「生きること」を同時に行う

著者が年商数百億円の企業役員として多忙を極めながら、仏教修行を続け、健康を維持し、人間関係を大切にし続けたことは、「稼ぐことと生きることは両立できる」という実証です。

どちらかを犠牲にする必要はない――この確信が、本書全体を貫くメッセージのひとつです。ビジネスで高い成果を出しながら、同時に人間として豊かに生きること。そのための実践が、倫理の遵守であり、カルマの種の管理であり、ギャップ・デイや瞑想的沈黙の習慣であり、そしてこの労働と休息のバランスです。

今日の働き方を少しだけ変えてみる余地はないでしょうか。15分早く帰宅する。昼休みを本当の休みにする。週末の午前中だけは仕事から完全に離れる――どれか一つから始めることが、稼ぐことと生きることを同時に行うための、最初の種です。

心を極める THE DIAMOND CUTTER
ビジネスの成功、心の豊かさ、そして人生の深い幸福――。それらを無理なく同時に手に入れるための“再現性ある方法”を示すのが『心を極める』です。根底にあるのは、2500年前の『金剛般若経』が説く「潜在性」という視点。私たちの経験・成功・問題・人...

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