「がん保険は要らない」——山崎元が実費明細で証明した公的制度の強さ

「もしがんになったら、家族に迷惑をかけてしまう」「会社を長期離脱したら、部下や同僚への影響が心配だ」「保険の担当者に勧められるまま加入したけれど、本当にこれで大丈夫なのか不安が残っている」――そんな気持ちを抱えながらも、保険の見直しを後回しにしていませんか?

40代の中間管理職として、家族を支える責任を強く感じるからこそ、「万が一のときに備えたい」という思いは切実です。しかし、その切実な気持ちに乗じて、本当は必要のない保険商品が売られているとしたら、どう思いますか? 毎月払い続けた保険料が、実は公的制度で十分に補えていたとしたら?

経済評論家・山崎元氏の著書『山崎先生、お金の「もうこれだけで大丈夫!」を教えてください。』は、その問いに対して衝撃的な答えを示しています。著者自身が食道がんに罹患し、余命宣告を受けながら闘病した実体験をもとに、自分の医療費明細を公開して「民間のがん保険は要らない」と断言した一冊です。今回はそのメッセージの核心に迫ります。

山崎先生、お金の「もうこれだけで大丈夫!」を教えてください。 90分で一生役立つお金の授業
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「がんが怖い」という感覚はどこから来るのかを考える

がんという言葉を聞いたとき、多くの人は「治療費が莫大にかかる」「家族に経済的な負担をかける」という不安をまず感じます。その感覚は間違いではありませんが、正確でもありません。

問題は、その不安が「正確な情報に基づいているかどうか」です。実際の医療費がいくらかかるのか、公的な制度でどこまでカバーされるのか、それを知らないまま「がんは怖い」という印象だけが先行している方がほとんどです。

保険の営業トークは、この「知らない」という状態を前提に設計されています。具体的な数字を示さずに不安を高め、「備えておいた方が安心ですよ」という言葉で加入を促す。その構造を知らなければ、誰でも言葉の通りに受け取ってしまいます。山崎氏が本書で真っ先に行ったのは、その不安の正体を数字で明らかにすることでした。

高額療養費制度が「公的な防衛ライン」になる仕組み

日本に暮らす私たちには、世界でも類を見ない手厚い医療保障制度があります。その中核の一つが「高額療養費制度」です。月ごとの医療費自己負担が一定の上限を超えた分は、国が払い戻してくれる仕組みです。

年収に応じて上限額は変わりますが、40代の会社員であれば、ひと月の自己負担は多くの場合8万円台が上限の目安となります。がん治療が数ヶ月にわたったとしても、この制度があるために家計への打撃は多くの人が想像するよりずっと抑えられます。

さらに長期の入院が続く場合には「限度額適用認定証」を使うことで、窓口での支払い自体を上限内に収めることもできます。こうした公的な仕組みを正しく理解すれば、民間のがん保険が補うべき「穴」がどこにあるのかを冷静に判断できるようになります。

著者が公開した食道がん治療の実費から読み取れること

本書が他のマネー本と根本的に異なる点は、著者自身の医療費明細と請求書が実証データとして公開されていることです。山崎氏は食道がんに罹患し、余命宣告を受けながら治療を続けました。その治療費の内訳を、本人が本の中で開示しています。

理論ではなく、現実の数字です。「高額療養費制度があるから保険は要らない」という主張を、実際の請求書という証拠で裏付けています。どれだけ精緻な統計や期待値の計算より、当事者の実費明細の方が圧倒的な説得力を持つのは当然のことです。

自分の明細を見せて語る言葉には、理論を超えた重みがある。

この姿勢は、職場でのプレゼンテーションにも通じる大切な示唆を含んでいます。数字を使うとき、その数字が自分自身の経験から来るものであれば、聞き手の信頼はまったく異なるレベルで得られます。山崎氏の証明方法そのものが、説得力の本質を教えてくれています。

保険営業が「恐怖心」を使う理由を理解しておく

がん保険の営業が効果的に機能するのは、人間の「損失回避」という心理的な傾向を巧みに利用しているからです。「もしも備えていなかったら」という最悪のシナリオを鮮やかに描かれると、私たちは冷静な判断をしにくくなります。

具体的な数字を示さず、感情的な共感から入り、「万が一のために」という言葉で加入を促す――この流れは、顧客の恐怖心を利用した販売手法です。山崎氏はそのトーク構造を本書で明示し、感情的な判断ではなく制度的な事実に基づいた判断を促しています。

自分が知識を持っていれば、相手の言葉の構造を客観的に見られます。部下や家族に保険の話をする立場になったとき、この視点は必ず役に立ちます。感情ではなく事実で語ることの重要性を、本書は行動で示しています。

余命宣告を受けながら書いた言葉が持つドキュメンタリーの力

一般的なマネー本の著者は、お金の知識を持つ専門家として読者に語りかけます。しかし山崎氏は本書において、知識の伝達者であると同時に当事者でもあります。余命を宣告されながらも執筆を続け、自分の経験を証拠として示したという事実が、本書全体を独特の緊張感で満たしています。

「だから民間の保険は要らない」と断言するその言葉は、生命の瀬戸際に立つ人間が自分の実費明細を前にして語った言葉です。これに対抗できる保険営業のトークは、おそらく存在しません。恐怖心に訴える言葉の対極に、実体験に基づく事実があります。

読者として本書を受け取ることは、著者が命をかけて整理した知識を受け継ぐことでもあります。それを家族のために使うか、自分の資産判断に使うかは読者次第ですが、少なくとも「何も知らないまま怖れる」状態からは抜け出すことができます。

家族と保険を見直す会話を始めるきっかけにする

本書で学んだことをもとに、パートナーと保険の見直しを話し合ってみませんか。「高額療養費制度があるから、実際にかかる費用はこのくらい」と数字で伝えられれば、お金に関する夫婦間のコミュニケーションは大きく変わります。

保険の話がかみ合わないのは、互いの「知っている情報量」に差があるからです。本書を一緒に読むか、あるいは要点をかいつまんで伝えるだけで、同じ認識を持つ出発点になります。感情論ではなく、制度的な事実の共有から始める会話は、家庭内の信頼感を高めることにもつながります。

毎月払い続けている保険料が本当に必要なものかどうか、本書を読んだ後に改めて確認してみてください。不要な支出を減らすことで生まれた余裕を、インデックス投資や家族との体験に回す――その判断を支えてくれる一冊として、山崎元氏のこの著書は手元に置く価値があります。

山崎先生、お金の「もうこれだけで大丈夫!」を教えてください。 90分で一生役立つお金の授業
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NR書評猫1357 山崎元 山崎先生、お金の「もうこれだけで大丈夫!」を教えてください。

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