毎月コツコツ貯金していますか?将来のために節約して、少しでも多く銀行口座に預ける。確かにそれも大切です。でも今、もっと重要な資産があることをご存知でしょうか。それが信用です。お笑い芸人で絵本作家の西野亮廣氏が著した『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』は、インターネット時代における価値観の大転換を示し、2018年ビジネス書グランプリ総合1位に輝きました。本書が最も強調するのは、これからの時代は信用こそが通貨になるという点です。今回は、その核心部分である「お金を稼ぐな。信用を稼げ」というメッセージに焦点を当てて、みなさんのビジネスや働き方にどう活かせるかを考えていきます。
信用がお金を生む時代の到来
西野氏は断言します。ネット社会では信用持ちこそが真のお金持ちになると。
従来、ビジネスの世界では直接的な収益や利益が最優先されてきました。しかし、クラウドファンディングや仮想通貨など、個人が直接多数の支援者から資金を得られる仕組みが生まれた現在、状況は一変しています。西野氏自身がその実例を示しました。絵本『えんとつ町のプペル』の制作にあたり、クラウドファンディングで日本国内史上最高額となる総額1億円を個人調達したのです。約1万人もの支援者が西野氏のプロジェクトに資金を提供しました。これは単なる資金調達ではなく、それまでに西野氏が積み上げてきた信用が形となって現れた瞬間でした。
つまり、クラウドファンディングとは信用をお金に換えるための装置なのです。どれほど素晴らしいアイデアがあっても、発信者に信用がなければ誰も支援しません。逆に、信用さえあれば、まだ形にもなっていない構想段階のプロジェクトでも多くの人が資金を提供してくれます。これが信用経済の本質です。
テレビで嘘をついて失った信用
では、信用はどのように築かれるのでしょうか。
西野氏は痛烈な体験から学んだと語っています。かつて、テレビのグルメ番組に出演した際、本当はまずい料理にも関わらず美味しいと嘘をつかなければならない状況がありました。その瞬間、西野氏は視聴者の信用を失ってしまったと痛感したのです。テレビタレントとしてスポンサーの意向に従うことは当然かもしれません。しかし、それによって視聴者との信頼関係は確実に損なわれます。
この経験から、西野氏は重要な決断をします。嘘をつかなければならない状況自体を断つため、そうした番組出演をすべて断ったのです。芸人としてテレビ出演を減らすことは収入減に直結します。しかし長期的に見れば、信用を失うことの方がはるかに大きな損失です。西野氏は目先の収入よりも信用の蓄積を選びました。
信用を得るには、芸人であっても自分の意思を明確に表明することが必要です。そこで西野氏はテレビスポンサーからの収入に頼る働き方をやめ、自身の意思を発信できる場としてオンラインサロンを開設しました。ファンから直接支援を受けられる環境を作り、スポンサーの意向に縛られず本音を語る。そうして得た信用が西野氏の大きな資産となり、クラウドファンディング成功の原動力になったのです。
認知タレントとファンタレントの明暗
本書では興味深い比較が紹介されています。タレントのベッキーさんとロックバンド「ゲスの極み乙女。」の不祥事後の明暗です。
ベッキーさんは一度のスキャンダルで露出が激減しました。これは彼女がスポンサー頼みの認知タレントでファンを持っていなかったためです。テレビに出ていれば誰もが知っている有名人でしたが、自分の意思で活動を支えてくれる熱心なファン層が存在しませんでした。一方、バンド側はコアなファンの支持で活動を継続できました。ファンは単なる消費者ではなく、アーティストを支える仲間として機能したのです。
この違いは何を意味するのでしょうか。単なる知名度や好感度よりも、熱心なファンからの信頼こそが持続的な価値を生むということです。テレビで広く浅く知られることよりも、少数でも深く信頼してくれる人々を持つことの方が、長期的には強い基盤となります。これは芸能人だけでなく、ビジネスパーソンにも当てはまる原則です。
貯金から貯信へのパラダイムシフト
西野氏は貯金より貯信だと言い切っています。信用を積めばお金は後からついてくると。
従来の価値観では、将来の不安に備えて現金を蓄えることが美徳とされてきました。しかし、低金利時代の今、銀行にお金を預けてもほとんど増えません。むしろインフレによって実質的な価値は目減りしていきます。一方、信用は時間とともに複利で増えていく性質があります。一度信頼を得た人は、次の挑戦でもさらに多くの支援を得やすくなるのです。
では、具体的にどうすれば信用を貯められるのでしょうか。最も重要なのは嘘をつかないことです。小さな約束でも必ず守る。自分の発言に責任を持つ。できないことはできないとはっきり伝える。こうした誠実な積み重ねが信用を築きます。
また、自分の専門分野で価値ある情報を発信し続けることも効果的です。見返りを求めず、まず相手に価値を提供する。そうした姿勢が結果的に信用の蓄積につながります。西野氏も、オンラインサロンで日々ファンとコミュニケーションを取り、自分の考えを率直に語り続けることで信用を積み上げてきました。
中間管理職が職場で実践できる信用の稼ぎ方
部下とのコミュニケーションに悩む中間管理職の方にとって、信用を稼ぐという視点は非常に有効です。
まず、部下に対して約束を守ることを徹底しましょう。忙しくても、面談の時間を確保すると言ったら必ず実行する。評価のフィードバックを週内にすると約束したら期限を守る。こうした小さな積み重ねが、上司としての信頼につながります。逆に、何度も約束を破れば、どんなに優れたスキルがあっても部下からの信用は得られません。
次に、自分の意見を明確に示すことです。上層部の意向をそのまま伝えるだけでは、部下はあなたを信頼しません。上司として組織の方針を説明しつつも、自分自身の考えや価値観も正直に語る。時には上層部に対して部下の意見を代弁する。そうした姿勢が、部下からの信用を生みます。
さらに、部下の成長に本気で投資することです。短期的な成果よりも、長期的な育成を重視する。部下が失敗しても責めるのではなく、一緒に原因を分析し次につなげる。こうした姿勢を続ければ、部下はあなたを信頼し、困難な状況でも全力でついてきてくれるでしょう。
家庭でも活かせる信用という考え方
信用を稼ぐという視点は、家庭生活でも応用できます。
妻との関係において、小さな約束を守ることが信頼の基盤です。帰宅時間を伝えたら可能な限りその通りにする。週末に家族の時間を作ると言ったら仕事を調整してでも実現する。こうした積み重ねが夫婦の信頼関係を強化します。逆に、いつも約束を破っていては、どんなに愛情を語っても相手の心には届きません。
子どもとの関係でも同様です。子どもに何かを約束したら必ず守る。できない約束はしない。親として子どもに求める前に、まず自分が誠実であることを示す。そうした姿勢が、子どもからの信頼を育み、親子関係を良好に保つ鍵となります。
西野氏が示した貯信の考え方は、職場だけでなく人生のあらゆる場面で有効です。お金は使えば減りますが、信用は与えれば増えていきます。今日から、あなたも信用を貯める生き方を始めてみませんか。
クラウドファンディング時代の働き方改革
西野氏のクラウドファンディング成功は、働き方の新しい可能性を示しています。
従来、大きなプロジェクトを実現するには企業に所属するか、銀行から融資を受けるしかありませんでした。しかし今は、個人でも信用さえあれば多額の資金を調達できます。これは雇用される側から価値を生み出す側へのシフトを意味します。会社に依存せず、自分の信用を資産として独立した働き方が可能になったのです。
あなたが温めているアイデアやプロジェクトがあるなら、まずは信用を積み上げることから始めましょう。SNSやブログで専門知識を発信する。小さなコミュニティで実績を作る。そうして築いた信用が、いつかあなたの大きな挑戦を支える力になります。西野氏は『えんとつ町のプペル』の前から、長年にわたってファンとの関係を大切にしてきました。その積み重ねがあったからこそ、1億円という支援を得られたのです。
お金は後からついてくる。まずは信用を稼ぐ。この考え方を実践すれば、あなたのキャリアも人生も大きく変わる可能性があります。

コメント