六法はバラバラな規則集ではなかった 荘司雅彦が明かす「すべての法律を貫く一本の柱」

「労働基準法は残業代をめぐる面倒なルール」「下請法はコスト交渉を縛る規制」「消費者契約法はクレーム対応を難しくする制度」――中間管理職として現場を仕切っていると、法律をそんなふうに感じてしまうことがあるのではないでしょうか。

ところが、荘司雅彦氏の『六法で身につける 荘司雅彦の法律力養成講座』を読み終えると、この認識が根本から覆ります。民法、刑法、商法、会社法、労働法、憲法――一見バラバラに見える六法のすべては、実は「基本的人権の尊重」というただ一本の精神的支柱によって結ばれているという発見が待っているのです。

この気づきは、法律の暗記から解放されるだけでなく、コンプライアンスの本質を理解し、部下や取引先との関係を根底から変える視点を与えてくれます。

荘司雅彦の法律力養成講座 | 荘司 雅彦 |本 | 通販 | Amazon
Amazonで荘司 雅彦の荘司雅彦の法律力養成講座。アマゾンならポイント還元本が多数。荘司 雅彦作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。また荘司雅彦の法律力養成講座もアマゾン配送商品なら通常配送無料。

「企業活動への縛り」と思っていた法律の正体

ビジネスパーソンが法律に感じる最大の不満は「なぜこんな制約があるのか」という感覚です。フリーランスのエンジニアに業務委託するたびに下請法を気にしなければならない。残業させようとすれば労働基準法が立ちはだかる。消費者向けサービスを展開すれば消費者契約法の条件を確認しなければならない。

しかし、本書が示す視点はまったく逆です。それらの法律は企業活動を妨げるために存在するのではなく、立場の弱い人たちの基本的人権を守るために設計されているということです。

下請法は、大企業の論理に一方的に従わざるを得ない中小企業の財産権と経営の自由を守る法律です。労働基準法は、労働者の生存権と人格の尊厳を資本の論理から守る法律です。消費者契約法は、情報格差の中で不利な立場に置かれる消費者の自己決定権を守る法律です。このように見えてくると、バラバラだった個別の規制が、一つの大きな設計思想のもとに整然と並んでいることに気づかされます。

六法を「人権の調整システム」と捉えると暗記が不要になる

著者が本書で強調するのは、法律を機械的に暗記する学習法の限界です。条文を覚えても、その背景にある目的を理解していなければ、似た条文の違いが掴めず、応用も利きません。しかし「この法律は誰のどんな権利を守るために存在するのか」という問いを立てれば、個別の条文が頭の中で有機的につながり始めます。

たとえば、労働基準法36条のいわゆる「三六協定」は、残業を認める手続きを定めた条文です。条文だけを暗記するなら、「過半数の代表者と協定を結び、労働基準監督署に届け出る」という手順を覚えることになります。しかし「この条文は労働者の休息権と健康権という基本的人権を守るための手続きである」と理解すれば、なぜ一方的に会社が決められないのか、なぜ監督署への届け出が必要なのかが自然に腑に落ちます。

制度の趣旨を人権の軸で理解すると、条文の意味が腑に落ちるまでの時間が劇的に短縮されます。
これが著者の言う1ヶ月で民法の全体像を把握できるという言葉の、もう一つの意味です。

中間管理職が「人権の視点」を持つと、部下との関係が変わる

この視点は、法律の学習にとどまらず、日常のチームマネジメントにも直結します。

部下が残業を断った場面を想像してみてください。「なぜこんなときに帰るのか」と感じるか、「この人には家族との時間や休息を享受する権利がある」と捉えるか――どちらの視点を持つかで、マネジメントのスタイルは根本から変わります。後者の視点は、法律を守るというより、部下の人間としての権利を尊重するという態度から生まれるものです。

これが、本書が読者に与える最も深い変化です。コンプライアンスを罰せられるルールとして恐れるのではなく、人権尊重という根拠を持った確信として内面化できるようになること。その確信があってはじめて、部下に自信を持って語れる言葉が生まれます。

「なぜこのルールを守らなければならないのか」と部下に問われたとき、「会社の規則だから」ではなく、「このルールはあなた自身の権利を守るためにある」と答えられる上司が、真に信頼されます。

コンプライアンスが「罰則回避」から「倫理の実践」へと変わる瞬間

企業でのコンプライアンス研修は、多くの場合「これをやったら法律に違反します」「この金額を超えたら処罰の対象になります」という形で進みます。知識として学ぶことには意味がありますが、それだけでは不正を防ぎきれないことを、数多くの企業不祥事が証明してきました。

なぜか。「バレなければいい」という発想を消すことができないからです。

本書の視点から見ると、企業不祥事の根本にあるのは法律知識の不足ではありません。誰のどんな権利を傷つけるのかという想像力の欠如こそが問題の核心です。データを改ざんすれば、その商品を信頼して購入した消費者の財産権と自己決定権が侵害されます。取引先に無理な価格引き下げを迫れば、相手企業の従業員の生活を守る権利が脅かされます。ハラスメントは、被害者の人格権と尊厳という最も基本的な人権を傷つける行為です。

こうした視点を持てるかどうかが、コンプライアンスを制度として守る人と、倫理として実践できる人の違いです。法律が基本的人権の調整システムであるという認識は、規則の暗記では得られない、この深い倫理観の源泉になります。

グローバルビジネスで「人権」が避けられないテーマになった理由

近年、ビジネスの世界ではESG投資や「ビジネスと人権」という潮流が急速に広まっています。サプライチェーン全体で強制労働が行われていないかの確認、海外工場での労働環境の適正化、取引先を含めたハラスメント防止の取り組みが、国際的な企業評価の基準として定着しつつあります。

これは欧米の話だけではありません。IT企業でシステム開発を外注する際にも、委託先の労働環境が適切かどうかを確認する責任が、発注者側にも生じてきています。「自社さえ守れば良い」という時代は終わり、ビジネスに関わるすべての人の権利を視野に入れたマネジメントが求められています。

こうした時代変化のなかで、法律を基本的人権の調整システムとして捉える視点は、もはや法学者や法務部門だけのものではありません。チームを率いる中間管理職が持つべき、経営の根幹に関わる教養といえます。

「知識」が「確信」になるとき、人は本当に動ける

本書の著者・荘司雅彦氏は、同氏の別著作において「想像力を鍛えることが法治社会の基盤である」とも述べています。刑罰の知識があっても不正は防げないが、自分の行為が相手にどんな苦痛を与えるかを具体的に想像できる人は、罰則の有無にかかわらず踏みとどまることができる――というのがその真意です。

法律という制度の学習と、他者の権利への想像力という人間的な能力。この二つが一人の中で融合したとき、単なる法律知識は「確信」へと昇華します。確信のある人は、迷った場面でも自分の判断軸を持って動くことができます。部下に説明できる言葉を持てます。取引先との交渉でも、感情ではなく根拠を持って主張できます。

六法はバラバラな規則の集積ではありません。すべての条文の奥に、人が人として尊重される社会を守るという一本の太い意志が流れています。本書はその発見を、忙しいビジネスパーソンにも届く言葉で丁寧に伝えてくれる、希有な一冊です。

荘司雅彦の法律力養成講座 | 荘司 雅彦 |本 | 通販 | Amazon
Amazonで荘司 雅彦の荘司雅彦の法律力養成講座。アマゾンならポイント還元本が多数。荘司 雅彦作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。また荘司雅彦の法律力養成講座もアマゾン配送商品なら通常配送無料。

NR書評猫1228 荘司雅彦 六法で身につける 荘司雅彦の法律力養成講座

注意

・Amazonのアソシエイトとして、双子のドラ猫は適格販売により収入を得ています。
・この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的・法律的なアドバイス等の専門情報を含みません。何らかの懸念がある場合は、必ず医師、弁護士等の専門家に相談してください。
・記事の内容は最新の情報に基づいていますが、専門的な知見は常に更新されているため、最新の情報を確認することをお勧めします。
・記事内に個人名が含まれる場合、基本的に、その個人名は仮の名前であり実名ではありません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました