豪雪地帯の新潟でコメ農家がレモン栽培に挑戦!育苗ハウスの有効活用で新たな収入源に


日本一のコメどころとして知られる新潟県で、「国産レモン」の栽培に挑戦する動きが広がっています。コメ農家がなぜレモン栽培に取り組むのか、その背景には「もったいない」という発想と経営の多角化という農家の知恵がありました。コメ農家の木龍拓也さんを中心とした新潟のレモン栽培の取り組みを詳しく見ていきましょう。

コメ農家がレモン栽培に挑戦する理由

新潟駅内にある青果店「YAOYA SUN」では、豪雪地帯・新潟で作られた「すかっとレモン」が販売されています。買い物客からは「新潟県産は見たことがない」「新潟で作っているところあるのかな。寒いから」といった驚きの声が聞かれます。

この新たな名産品づくりに挑戦しているのは、明治時代から続くコメ農家の7代目・木龍拓也さん(31)です。毎年約40トンのコメを生産する本格的なコメ農家でありながら、2024年からレモン栽培をスタートさせました。

なぜコメ農家がレモン栽培に挑戦するのでしょうか。その理由は次の2点にあります。

未使用ハウスの有効活用:コメの育苗ハウスの利用期間は4月~5月中旬のわずか1か月半だけで、残りの10か月間は使われていない状態でした。「もったいない」という思いからこのハウスを活用するためにレモン栽培を選びました。

収入源の多様化:木龍さんは「コメ不足って、今話題になってますけど、天気には抗えないので、そこの部分で(コメ栽培は)大変。毎年(コメの)金額の上げ下げがあるので、今年はどれぐらいの価格になるのか心配になる」と語っています。コメの価格が安定しない中、レモン栽培を新たな収入源として期待しているのです。

育苗ハウスを活用した効率的なレモン栽培

木龍さんが栽培しているのは「ビラフランカ」という品種のレモンです。これは広島県などレモン名産地でも栽培されている品種で、トゲが小さくて少ないことが特徴です。

育苗ハウスを活用したレモン栽培の効率的な方法として注目されているのが、「鉢植え」での栽培です。新潟でのレモン生産の第一人者・石黒正良さんは、自身のハウスで地面に植えての栽培と鉢植えでの栽培を比較したところ、約1000個のレモンを収穫できたうち800個が鉢植えで栽培したものだったといいます。地面に植えるより、はるかに収穫できる個数が多いことがわかったのです。

石黒さんは「ある程度こういうふうに狭いところでレモンを作ることによって、子孫を残そうとして実をつけるわけですよ」と説明しています。限られたスペースで効率的に栽培できる鉢植えは、育苗ハウスとの相性も良いでしょう。

寒冷地でのレモン栽培の工夫とメリット

レモンはインド東部の温暖な地域が原産で、柑橘類の中では寒さに弱い果実の一つです。一般的にレモンの露地栽培に適した気候は、年平均気温が15.5度以上であること、年間の温度差が少ないこと、日照量が豊富なことなどが条件とされています。

では、豪雪地帯の新潟でなぜレモン栽培が可能なのでしょうか。そこには以下のような工夫があります。

ビニールハウスの活用:冬の寒さをしのぐためにビニールハウスを活用しています。山形県の事例では、ビニールハウスを二重にすることで室温を上昇させる工夫がされています。

鉢植えでの栽培:鉢植えにすることでハウスへの出し入れが容易になり、気温管理がしやすくなります。また、「鉢を直接地面に置くと鉢内の水はけが悪くなってしまうのと、地面の冷気を直接受けやすくなってしまうので、地面にパレットを敷く」など工夫をしている例もあります。

樹形の工夫:レモンは通常4mほどの高さまで成長しますが、ハウス内で栽培するためには高さを抑える必要があります。そのため、枝を紐で引っ張るなどして横に広く育つように工夫しています。

このような工夫により、寒冷地でのレモン栽培が可能になります。また、寒冷地のレモン栽培には以下のようなメリットもあります。

農薬使用の削減:輸入レモンと比べて輸送時間が短いため、防カビ剤を使わずに済みます。皮ごと安心して食べられるという付加価値があります。

ハウスの有効活用:コメ農家の場合、育苗ハウスを年間通して活用できるため、設備投資の効率が上がります。

需要増加への対応:円安などを背景に輸入レモンの価格が高騰し、国産レモンの需要が高まっています。農水省によると生鮮・乾燥レモンの輸入量は、05年は7669万キロあったが23年は4333万キロで44%減少し、1キロ当たりの単価は128円から259円に上昇しています。

新潟産レモンのブランド化への取り組み

新潟でのレモン栽培は2022年12月から始まった比較的新しい取り組みです。現在は新潟県内15軒の生産者が参加し、2026年の本格出荷を目指して栽培方法の普及などが進められています。

新潟産レモンはすでに地元で活用され始めています。新潟市内のベーカリー「MOUNT TEN BREAD」では、このレモンを使った新メニューを開発。「海外産のレモンとかは、爽やかな香りが少し弱かったりするが、フレッシュな香りはすごく強く感じました」と商品開発者は評価しています。

また、「すかっとレモン」の本格出荷は2025年の冬を目指しています。木龍さんは「コシヒカリとかは有名ですけど、それに並ぶような雪国レモンというところを期待してます。(名産に)なると思います」と意気込みを語っています。

これからの国産レモン市場と新潟レモンの可能性

国産レモンの生産は近年拡大傾向にあります。レモンは主産地の広島県や愛媛県で生産が伸び続けている上に、和歌山や宮崎など他県でも拡大しています。産地名を冠したブランドレモンも相次いで誕生しています。

レモンの需要が高まる背景には、健康志向の高まりがあります。ビタミンCを豊富に含むレモンは、健康食品として注目されています。また、レモンサワーやレモネードのブームも好調な需要を後押ししています。

ポッカサッポロフード&ビバレッジ(名古屋市)では、主力商品の果汁「ポッカレモン100」の23年の販売本数が、03年と比べて10%以上増えています。同社は、国産レモンがさらに増えれば、今後も国産レモンを使った商品化を検討したいとしています。

新潟のレモン栽培は、コメ農家の新たな収入源としてだけでなく、国産レモン市場の拡大と多様化にも貢献する可能性を秘めています。寒冷地で栽培される「雪国レモン」ならではの特徴を活かしたブランド化が、今後の発展のカギとなるでしょう。

まとめ:農業の多角化とリソースの有効活用が導く新しい可能性

新潟のコメ農家によるレモン栽培の挑戦は、「もったいない」という発想から生まれました。コメの育苗ハウスという既存のリソースを最大限に活用し、不安定なコメ市場に依存しない経営の多角化を目指す取り組みは、現代農業の一つのモデルケースとも言えるでしょう。

2009年に農林水産省が発表したデータによると、全体の53.6%の農業法人が多角化に取り組んでおり、その中の54.9%が「農産物の加工事業」に、63.8%が「農産物の販売事業」に取り組んでいるとされています。木龍さんのレモン栽培はこうした農業の多角化の流れに沿ったものと言えるでしょう。

豪雪地帯の新潟で育つ「すかっとレモン」が日本の食卓に並ぶ日も、そう遠くないかもしれません。これからの展開に注目していきたいと思います。


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